ブログを活用した授業(2)

7年前の今日,telling and testing pedagogyを克服する授業として,「ブログを活用した授業」のことを書いた。7年間にどれだけ前に進んだか考えてみる。

一方的に講義を聴き,そこで理解したことや考えたことを試験で検査するという方法1に代わる新たな教育方法を考えている。今考えているのは,ブログの活用だ。学期中の授業に関連する自らの研究の過程をブログに記録・公表させるのだ。

ブログは,文章を書く練習になるだけでなく,書く過程でいろいろ考えることにもなるだろう。また,書いたことを学生同士で互いに読み合い,コメントし合うことで,互いの考えが発展し,また相手に分かる文章を書くきっかけにもなる。試験やレポートのように最終成果だけで評価するのではなく,プロセス自体を評価することができる。学生は,従来の試験やレポートでよくなされる一夜漬け的な対応はできなくなる。(ブログを活用した授業,2011.1.3,から引用。以下同じ)

この部分は今も変わらず重要だと思っている。しかし,この7年間では実現できなかった。何とか来年(2019年度)実現したいと思い,今年準備を進めるつもりだ。

多人数のクラスでこれをやると,教員の負担が大きくなる恐れがある。学期に複数回のレポート添削をやって懲りているので,何かうまい方法を考えなければならない。そこで,次のような評価の方法を考えてみた。

  • ブログ点:自分のブログのエントリーの数に比例して与える。
  • コメント点:他人のブログエントリーに対するコメントおよびコメントに対するコメントの数に比例して与える。学生は少人数に班に分け,班内のメンバー相互でコメントをつけさせるようにする。班は学期中に何度か入れ替え,班員の当たり外れの弊害をできるだけ小さくする。
  • 「いいね!」点:各エントリーに与えられた「いいね!」の数に比例して与える。

これならば,教員はブログエントリー全部を読んで評価する必要はない。評価は,受講者相互のコメントおよび「いいね!」によって日常的に与えられる。もちろん,教員も全体をそれなりに把握して,できる範囲でアドバイスや評価をしていくことになる。

これに似たようなことはこれまでに試みた。各回授業のまとめをブログに投稿させ,それにコメントを付け合わせる。そして,それらの数に応じて点数を与える。また,「いいね!」点を試したことがある。しかし,それらはどれもうまく行かなかった。数(点数)を稼ぐことが目的化して,本来の目的がうまく果たせなかったからだ。ブログ活用はいいのだが,それをどう成績評価に反映させるのかをよく考えないといけない。

こうしたことを実際にやるためのシステムとしては,私がいまこのブログを書くために使っているWordPressを使うのが好都合だ。「いいね!」の機能を追加するために,適当なプラグインを探してみたところ,WP Likesというのが見つかった。使い勝手を試すため,とりあえずこのブログに設置してみた。

2011年度の授業から,WordPressをベースにした共同受講ブログ2を導入して,上記のブログを活用した授業を実現しようと努力した。しかし,短いメッセージをやりとりする授業SNS3を導入したところ,そちらの方が学生の受けがよかったため,授業SNSをメインに使い始めてしまい,ブログの活用の方向で深めることをしなかった。短いメッセージの投稿数を成績評価に使うことが,さらに混迷の原因となり,結局授業SNSの試みは,2015年度で終わることとなった4

今後は,初心に戻って,ブログをきちんと使うことを考えたい。そのために現在開発中なのが,SLSS (Social Learning Support System)5だ。

問題は,どのような課題を設定させ,教員からはどのような情報提供や支援をするかということだ。授業サイトをどのように構築し,毎週の授業では何をするかも考えなければならない。

この問題はこの7年間,解決できなかった難問だ。結局,授業は従来通りの講義を行ったため,telling and testing pedagogyを脱することができなかった。やっと今,方向性が見えてきたところだ。オンライン教材による個別学習を授業中にも行うということで,従来型の授業の限界を突破できないかと考えている。

参考:Independent & Social Learning (2017.11.3)

まとめ

7年間でどれだけ前に進んだか。その答えは,“ほとんど進んでいない”ということである。何か変わったことがあるとすれば,それは評価方法が重要だということが分かったことだ。まだどのようにするのが良いのかは分かっていないが。また,授業で講義をメインにする限り,授業は変わらないということも。講義以外の情報伝達方法を考える必要がある。これについては,授業サイトや講義ビデオの作成に関するこの7年間の模索が役に立つだろう。新しい教育に関する理論や実践例も蓄積されてきたので,機は熟してきたと言える。

  1. telling and testing pedagogyのこと。授業を振り返りたくなる時期(2016.12.13)参照。
  2. WordPressにP2というテーマを導入したTwitter風のインターフェイスを持つブログ。共同受講ブログ(2011.4.12)参照。
  3. WordPressにBuddyPressというプラグインを導入したTwitterやFacebookに似たインターフェイスとソーシャル機能を持つシステム。授業SNS(2012.2.22)参照。
  4. ’15年度後期 授業の反省(2017.1.14)参照。
  5. CommentPressその後(2017.10.19)参照。