CommentPressその後

ブログの各段落にコメントを付けることができるようにするWordPressのプラグインCommentPressに最近注目している。これを活用した授業をしてみたくなった。

3年前,このブログにCommentPressを導入してみた。私たちは本の欄外に書き込みをしながら読んだりするが,そのような感覚でブログを読んだ人がコメントを付けてくれると面白いと思ったのである。この試みは,すぐに止めてしまったが(当時はソフト自体もこなれていなかった1),大学の授業で学生にソーシャルリーディングをさせることができるのではないかと,その活用の可能性についてはずっと気になっていた(→読書会方式)。

最近,米イリノイ大学などが提供しているScholarというシステムを知り,似たようなシステムをCommentpressBuddyPressを使って構築できるのではないかと思うようになった。Scholarというシステムは非常に多機能だが,授業で利用できるのはCommunityCreatorの機能だ。それぞれBuddyPressとCommentPressで似たようなものを作ることができる。Scholarを使った授業実践の例は多数あり2,大学の授業での活用法を考える上で役に立つ。私は,これを学生によるレポートの作成と相互レビューに使いたいと考えた。

これまで,授業サイトで学生にレポートを提出してもらい,学生同士でコメントをつけあうような試みは何度かしたことがある。しかし,なかなか思うようにいかなかった。今度はもう少しうまくいくような気がしている。その理由は以下のようなことが可能になるからだ。

  • コメントをかなりきめ細かくつける(段落,一文,語句などに対して)。コメントをつけられた側は,漠然としたコメントより,そのようなコメントの方が役に立つと思えるだろう。
  • 少人数のグループ内で相互レビューを行う。クラス全体でコメントをつけあうと,読むべきレポートの数が多すぎで,コメントをつけることが疎かになる場合があるが,適度な人数(例えば6名)のグループなら,じっくり読み合うことが可能だろう。
  • コメントをもらったあとで,レポートを書き直す。その際には,どのような理由でどこを修正したか,自分でコメントをつけてもらう。さらに,それに仲間からコメントをもらってもいいだろう。書きっぱなし,提出して終わりといったレポートのあり方がだいぶ変わる可能性がある。
  • レポートやコメントが投稿されたことは,BuddyPressの掲示板(Twitterのタイムラインのようなもの)で知ることができる。サイト内の参加者の活動はみなそこに表示されるので,つけられたコメントを読み損なうこともない。

さらに,CommentPressは,教員が作成した授業サイトのコンテンツに対しても学生がきめ細かくコメントすることを可能とする。授業内容の細かい点についても,きめ細かく学生同士や学生と教員が議論することができるだろう。また,教員自身がコメントをつけることにより,授業で説明が足りなかった部分について,補足説明を行うことも簡単にできる。

教員が提供する知識を核として,学生と教員の活動によりその知識が発展変化していく。そのような動的な授業が可能になるのではないだろうか。

10/23追記

台風で休講になった時間を有効活用して,CommentPress/BuddyPress/WP Coursewareサイト(のシステム)3を完成させた。通常,日本語化に手間取ったりして最後の詰めに時間がかかるものだが,Loco Translateという便利なプラグインを使い,思ったよりも早くできあがった。

このCommentPress/BuddyPressサイトに,WP CoursewareというLMSプラグイン4を入れて,Moodleのような学習進捗管理ができるサイトを構築することができた。これで,学生が,他の学生や教員と交流しながら自主的に学習を進める仕組みができあがったと言える。果たしてそのような授業・学習は可能なのだろうか? 来年度以降に試してみたい。

このサイトを構築するために利用した主なソフトは以下の通り:

  • WordPress
  • CommentPress Core
  • BuddyPress
  • BP Groupblog
  • WP Courseware
  • Easy Footnotes
  • WP User Frontend
  • Disable Toolbar
  • Frontier Restrict Backend
  • Join My Multisite
  • Ashuwp Invitation Code

 

【天気】台風21号が早朝に関東地方を通過。午前6時現在,東京23区に暴風警報が発令されていたため,午前中の授業は休講(私の「科学と技術の社会史」も)。午前9時現在では解除されたため,午後以降の授業は通常通り。但し,午後もかなりの強風。

  1. 今では,かなり洗練されてきている。たとえば,このシステムを使ってソローの著作にみんなで注釈をつけるサイトThe Readers’ Thoreauなども存在している。大学の授業でこのサイトを利用しているケースもある。このサイトのチュートリアルビデオは参考になる。
  2. Cope & Kalantzis, eds., e-Learning Ecologies: Principles for New Learning and Assessment, Routledge, 2017, Ch.5: Recursive Feedback.
  3. 2017.12.22にこのシステムをとりあえず,SLSS (Social Learning Support System) を呼ぶことにした。’17年度後期 授業の反省(2017.12.11/12.22追記)注2参照。
  4. このプラグインにたどりつくまで,かなり試行錯誤した。他に試したプラグインには,LearnDash, Sensei, LifterLMS, LearnPressがあるが,どれもCommentPress Flatテーマとの相性が良くなかった。