’18年度前期 授業の反省

第14週(昼間部最終週)に入ったところで,今学期の授業の反省をする。8/8最終更新

新しい授業方式

毎回,講義に加えて,個人学習とグループ活動の時間を必ず取るようにした。教員から一方的に情報を与えられる「受け身の学び」ではなく,「主体的に学ぶ」ことと「仲間とともに学ぶ」ことを目指した。結果的に毎回の講義は45〜50分,個人学習は25分程度,グループ活動は15分程度,最後の振り返りに10分程度といった時間配分となった(当初の予定では,講義40分,個人学習30分,グループ活動20分,振り返り10分)。

これは,基本的に教員が話し,その内容を学生が覚えているかテストする“telling and testing” pedagogyを克服する第一歩だった。2010年にその必要を痛感してから8年が経過してやっとここにたどり着いた。

個人学習とグループ活動は,講義内容に関連する小レポートの作成を中心に進めた。これは,授業サイトのグループブログに小レポートを提出し,メンバー同士でコメントを付け合うことと連動させた。

毎回違うテーマで講義をするため,受講者は毎回新しいテーマの小レポートを書くことになるが,これは受講者にとって負担が大きかったかも知れない。出席者は途中から減り始め,最後の方では当初の半分近くに減ってしまったクラスもある。また,小レポート作成の際の余裕のなさは,質問タイムの活用が振るわなかった一因でもあるようだ(後述)。

私が現在痛感しているのは,授業中の受講者の様々な活動(小レポート作成,グループ活動,振り返りなど)をどのようにやればよいのか,十分な説明もなしに始め,ただひたすら回数を重ねさせたことである。その中で,自分(たち)なりのやり方を見いだせた受講者はよかったが,そうでなかった受講者はかなり苦しかったのではないだろうか。「責任の移行モデル」を知り,今回いきなり受講者に大きな責任を移行してしまったことを反省している。来学期は,段階的な移行のやり方を模索していきたい。

授業サイト

ブログを活用した授業自体は,2011年度からの共同受講ブログの試み以来,7年間続けてきたのだが,今学期ほど本格的なブログとして活用したことはなかっただろう。これまでは,結局マイクロブログ,ソーシャルメディア的な利用となってしまっていた。本格的な文章を書かせたいという私の意図がなかなか実現しなかったのだが,今学期は少し前進した。

特に,コメントを画面右サイドバーに表示させることのできるCommentPressというプラグインを利用し,ソーシャルリーディング的な使い方を模索した。これも,十分な指導もないままに進めたため,私が期待したような利用法をする学生は少なかったので,これも改善の余地はある。今後は特に,教員が用意したWeb教材上にコメントを付けることを推進したい1

今学期の授業サイトにおける受講者のコミュニケーションは,おおむね授業での班(8人程度)をベースにしたグループブログの中に留まっていたが,全クラスの受講者(約250名)が一つのオンラインコミュニティに属していて互いにコミュニケーションを取ることができるのであるから,受講者のコミュニケーションの範囲がもう少し広がってほしいと考えている。来学期は,ブログの単位をグループではなく,クラスとし,学期の途中で班編制を変えても問題ないようにしたいと思う。

今回は,教室でのグループ活動とオンラインでのコミュニケーションを円滑に結びつけるため,ウェブ上では実名が表示されるようにした。匿名制に慣れた学生にとって抵抗があるのではないかと思っていたが,その件に関する学生の意見は特になかった。

班編制

今回は,第2回の授業で,ランダムに出席者を8名程度の班に分けた。その後の1か月くらいで各班多少の変動はあったが,再編制をする程でもないと判断し,学期の最後まで同じ班編制で進めた。しかし,学期の半ばを過ぎた頃から受講者が目に見えて減り始め,班によっては半分くらいになってしまったところも出てきた。減り始めた時点で再編制していればそれほどのアンバランスは生じなかったと思われるので,来学期は途中で再編制を行おうと思う。

期末レポート

期末レポートにピアレビューを導入した。これは,最終的に提出されたレポートを学生同士で評価するというのではなく,草稿を読みあってコメントを付け合い,そのコメントを参考にして草稿を改訂し,最終版を提出させるというものである。

ピアレビューの際には,教員が提供したチェックリストを使うように指示した。必須の項目12,目指すべき項目5の全17項目が列挙されている。期末レポートではどういうことが求められているかということがそれなりに伝わったのではないかと思う。ピアレビューとして付けられている学生のコメントを読むと,なかなか良いものが多い。教員が全部のレポートに短期間でコメントを付けるのは不可能だが,こうしたピアレビューなら可能であることが分かった。

今思うのは,これはもっと早い段階でやっておくべきだったと言うことだ。小レポートについても,時々ピアレビューをやっていたら,小レポートの質ももっと早く向上していたことだろう。

質問タイム

私は,個人学習の時間は,個人指導の時間にもしたいと考えていた。そこで,受講者には,質問タイムだから何でも質問・相談しに教員の所まで来て欲しいといっていた。しかし,実際に個人学習の時間に教員の所まで来る学生はほとんどいなかった。私は手持ちぶさたで座って待っているか,机間巡視をしているかという感じだった。

これについては,どうしてそうなるのか,学生が教員の所に来るようにするにはどうすればよいのかを,受講者へのアンケートで尋ねた。

科学と技術の社会史


科学技術と現代社会

そこから窺えるのは,個人学習の時間内に小レポートを仕上げてしまいたいという学生の気持ちである。質問しにいけば,その分だけ授業時間外にレポートを書かなければならない。それは避けたいということのようだ。また,静かな教室で,教員の所まで行って話をするのはいやだということもあるようだ(授業終了時に教員の所に来る学生は多少いる)。さらに,どんなことを質問してよいのか分からないということもあるようだ。

今後は,質問することで授業時間外学習が増えるという心配をさせないような工夫が必要だろう。また,質問の仕方についても指導が必要だろう。

講義内容

講義内容は,昨年度とほぼ同じ内容だったが,講義時間が短くなった分,多少圧縮した。他の活動とのバランスを考えると,もう少し厳選しなければならない。さらに,小レポートの作成と関連させる必要もあるだろう。講義内容の構成を大幅に見直すことも必要だと思われる(これは来年度の課題)。

ニュースレター

5月下旬から,週1回のペースでニュースレターをメール配信した。受講者に対する連絡・お知らせと教員の思いを受講者に伝えたいと思って配信してみたのだが,どうもあまり感触はよくない。メールという手段が今の学生にはあまり適していないのかもしれない。

追記8/6: 授業アンケートでは,ニュースレターの配信が教員の熱心さの表れとして評価しているものもあった。無駄ではなかったと思うことができた。

所見票

今学期の授業アンケートの結果と所見票はこちら

授業アンケートの集計結果は,1項目を除いて昨年度までと大きな変化はなかった。その1項目とは,授業時間外学習時間だ。これはすべてのクラスで著しい増加があった。

自由記述欄の回答はどのクラスも少なめだった。特に改善すべき点については少なかったのが意外だった。

来学期に向けて

今学期の経験は,来学期の改善に向けての多くの気づきを与えてくれた。現在のところ考えている改善点は以下の通り(2018年度後期の達成状況を◎○△×で表示):

  1. △学生がすべきことについて十分な説明と練習の機会を与える(○レポートの書き方,×ピアレビューの仕方,×教員とのカンファランスの仕方,△振り返りの仕方など)。
  2. ◎レポート等を提出するブログは班ごとではなく,クラス毎に設置する(学期途中での班替えおよび班を超えてのピアレビューに対応)。
  3. ◎提出すべき小レポートの数を固定しない。作成のペースは各自に任せる。なお,学期中コンスタントに作業を進め,作業の記録も提出することを求める(早めに終わらせて,後は休むといったことは許さない)。ただし,単位取得のための最低提出数は定める。
  4. ◎学期中の自らの学びの成果をポートフォリオにまとめて提出させ,それをもとに成績評価を行う。
  5. ◎ブログの投稿画面の入力欄には,書式をコピーできない形にする(今学期,ワープロ等からの貼りつけにより余計な書式がコピーされ,問題が頻出した)。また,下書きを保存して後で編集して,公開できるようにする。
  6. ×講義内容を小レポート作成方法の説明と関連するものとする。
  7. ×質問づくり2の活動を導入する。
  8. ×講義にブックトークを導入する。

【天気】晴れ。

  1. 「教科書の注 再考」参照。
  2. ダン・ロスステイン,ルース・サンタナ(吉田新一郎訳)『たった一つを変えるだけ——クラスも教師も自立する「質問づくり」』(新評論,2015年)参照。