「学びの責任」は誰にあるのか

ダグラス・フィッシャー&ナンシー・フレイ(吉田新一郎訳)『「学びの責任」は誰にあるのか—「責任の移行モデル」で授業が変わる』新評論,2017年,288頁

2018.7.1読了

原書のタイトルは,Better Learning Through Structured Teaching: A Framework for the Gradual Release of Responsibilityで,初版は2008年刊行。2013年に第2版が出ている。邦訳は第2版をもとにしているが,著者の了解を得て,一部訳者が解説の挿入や内容の差し替えを行っている。

邦訳のタイトルは若干ミスリーディングだ。これだと,「学びの責任」のありかを議論する本のようにも見えるが,実際は,学びの責任を教員から子どもへと段階的に移行していく具体的な方法が書かれている。その方法(枠組み)とは,

  1. 焦点を絞った指導(Focused Instruction)
  2. 教師がガイドする指導(Guided Instruction)
  3. 協働学習(Collaborative Learning)
  4. 個別学習(Independent Learning)

の4つである。Independent & Social Learningを授業で実現したいと考えていた私としては,何かヒントになることが書かれているのではないかと期待して読んだ。そして,本書はその期待に応えてくれた。

本書から学んだ最大のことは,協働学習や個別学習といった学生の自主性を生かした学習を行わせるための準備として,そのやり方を丁寧に指導する必要があるということである。学びの責任を学生に渡す際,一気に渡してはいけないのである。

たとえて言えば,泳ぎを教える際に,泳ぎ方を講義しただけで,いきなり水に入って泳ぐことを強いてはいけないのである。しかし,私は本書を読むまでそのことに自覚的ではなかった。

今学期,授業で小レポートを作成する時間をとったり,グループディスカッションをする時間をとったりしたが,そこで学生がすることについて十分な指導はしていなかった。私が期待したような活動を学生たちがしなかったのには理由があったのだ。

来学期は,このことを心に留めて,授業を再構築したいと思っている。

【天気】曇り時々雨。