’07年度後期 授業の反省

今学期も,授業が終わりかけた時点で今学期の反省をする。

授業内レポート方式について
今学期の授業の最大の変更点は,「授業内レポート方式」を採用したことである。これは,宇田光氏により「BRD(Brief Report of the Day)方式」として提唱された授業法(Kさんによる紹介)だが,かなり基本に忠実にこれを実施した。具体的な授業の進め方は以下の通りである。
まず,前回の授業内レポートを返却する。名前を呼んで取りに来てもらうが,90名のクラスだと15分はかかる。その後,講評を行う。最初の頃は,よく書けているレポートをOHC(オーバーヘッドカメラ)で見せて紹介した。どのようにレポートを書けばいいか分からない学生も少なくないからだ。また,授業サイトにも数篇のレポートを参考例として掲示した。これらはみな匿名の形で行った。
次に,その日のレポート課題を提示する。多少の説明はするが,せいぜい5分程度。そして,5〜10分程度,構想を練る時間を与える。この時に,学生は教科書・参考書やその時間に配布した参考資料のプリントを読む。これは授業内に行う予習の意味もある。
そして,いよいよ私の講義が始まる。パワーポイントを使って,密度の濃い講義を30〜45分程度行う。内容はそれまで90分の講義でやっていたことを少し減らした程度で,大事なことは伝えているつもりである。また,その講義の中で10分程度のビデオを見せることもある。そうすると,講義時間はますます少なくなる。
そして,最後に授業終了のチャイムが鳴るまで,多くの場合30分前後の時間がとれるが,授業内レポートを執筆してもらう。早く書き終わった人から提出して退室してよいことにしているが,大半の受講者は授業終了まで書いていた。
授業が終わった後は,そのレポートを読み,S, A, B, C, 要修正の評価を付け,添削し,コメントを添える。大半のレポートはS, A, B, Cなどを付けるだけだが,1枚に平均2分程度はかかる。90枚だと3時間以上かかる。
このようなやり方を毎回続けた(技術者倫理は全11回,技術の社会史は全10回)。かなり大変だったが,学生の理解を把握するのに役立ったし,誤解しやすいポイントもよく分かった。また,学生の文章力も次第に上達したように思う。最終的な成績評価と学生の授業評価を見ないと判断できないが,かなり有効な授業法だったように感じている。

授業サイトについて
今学期もMoodleを使って授業サイトを構築した。先学期と違い,レポートの提出は紙ベースで行ったので,授業サイトはもっぱら授業に関する参考情報の提供となった。そのため,アクセスはおろか,登録すらしない学生が多数(履修者の約半数)存在した。先に書いたとおり参考レポートも載っているので,あまり良いレポートを書いていない学生には見て欲しかったが,いくら呼びかけても見てくれない学生もいる。授業で,なぜ見ないのか聞いたが,技術的な問題などはなさそうだった。
授業サイトについても,授業アンケートで聞くので,その結果を待ちたい。

板書・講義について
先学期は,あえてパワーポイントの使用を控えて,板書中心の授業を行ったが,学生は自分なりに要点をまとめる力が弱く,そのため理解度が下がったように感じられたので,今学期はまたパワーポイント中心の講義に戻した。講義時間が以前の半分以下になったこともあり,これは有効だったと思う。講義のあとレポートを書かなければならないので,講義を聴く態度が全体的に良かったように思う。私語もほとんどなかった。講義中だけでなく,授業全体で私語は比較的少なかった。90名と比較的大人数のクラスでもそうだった。授業内レポート方式の一つの利点だと思う。

「技術の社会史」の内容について
この科目は今学期が初めてのものだが,旧カリの「科学技術史B」と対応している。しかし,昨年度の同科目とは全く違う内容のものであった。昨年度は,廣重徹『科学の社会史』を教科書として,日本の近現代科学史を取り扱った。しかし今学期は,エンジニアの社会史(教育制度史)を扱った。参考書に村上陽一郎『工学の歴史と技術の倫理』を指定し,最初はこれに沿うかたちで講義をしようかと思ったが,結局自分なりの内容を考えることにした。これは良かったように思う。教科書がなかったため,レポートの参考資料として毎回A4裏表の資料を配付したが,これもちょうど良い分量だったのではないか。学生へのアンケートで確かめたい。

「技術者倫理」の内容について
これは,内容的には前学期とほぼ同じ内容を扱ったが,前学期とその前の学期に扱ったロボット技術の倫理問題については,今学期は扱わなかった。授業内レポート方式をとったため各回に扱える内容が減ったためでもあるが,また,ロボット倫理については別の授業で扱いたいという考えもあってのことだ。分量を減らしてちょうど良かったと思う。

成績評価について
今回は,授業内レポートと宿題レポートのみで成績を付けることにしたので,定期試験は実施しない。授業内レポートは,これまで提出してもらい,返却してきたものをもう一度まとめて出してもらう。「要修正」の評価のレポートは修正版も出してもらう。宿題レポートは,冬休みに取り組んでもらうということで出している。これらをまとめて綴じて,講義最終日の翌週に提出してもらうことになっている。採点表を事務に出すまでの時間が少ないのだが,授業内レポートについてはすでに評価をしているので,レポートの採点と成績評価は比較的楽になるのではないかと期待している。これはやってみないと分からない。
毎回きちんと出席して授業内レポートを出し,宿題レポートもそこそこできれいれば容易に単位は取れると思う。欠席が多いと,レポートの出来不出来により単位を取れないこともあるだろう。しかし,これまでの私の授業よりは平均点がよくなると期待している。今学期から成績評価ガイドラインが導入されるのだが,調整なしでクリアできてほしいものだ。

2008/1/22追記
成績評価の結果は,予想通り,例年よりも良くなった。しかし,宿題レポートの出来はあまり良くなかった。時間をかけてじっくり取り組むことを期待するのは難しいのかもしれない。剽窃も多数見つかった。
今回,レポートのみで評価をしたが,採点の手間は試験の場合とそれほど変わらなかった。

2008/2/18追記
学生による授業評価アンケートの結果は次の通り。
授業内レポート方式について

【天気】晴れ。