振り返りアンケート

今学期の各授業の最後に,「振り返りアンケート」というものを実施した。その目的は,それぞれの科目の大きな目的に照らして,自分はどれだけ変化(成長)したかを自己評価してもらい,それを踏まえて今後どのように学んでいきたいか,目標を立ててもらうということだ。

具体的には,次のような二つの設問を設けた(科目によって多少文言は異なる)。

  1. 本科目の目的は,優れた科学技術者や良識ある社会人に必要な教養を身につけることでした。この科目を受講する前と現在とを比較して,その点でのあなたの教養(知識,スキル,見方・考え方,能力,興味・関心,態度,意識,意欲など)はどのように変化しましたか? 具体的に書いてください。
  2. あなたは,優れた科学技術者や良識ある社会人に必要な教養をさらに身につけるために,来学期(あるいは卒業後),何をしようと思いますか? 現時点でのあなたの目標を具体的に書いてください(本科目に関係のあることでも,関係のないことでも結構です)。

このアンケートにより,この科目での学びが本学での勉学全体においてどのような位置づけにあるかを学生が意識するようになったと思う。それぞれの科目の最後に,あるいは最初にも,こうした意識化を繰り返すことで,目的をもって自律的に学ぶ態度が身に付いていくのではないかと思っている。

また,教員にとっては,自分の授業が学生の何を変えたのかがよく分かって,とても嬉しい。もちろん,そうした変化は,これまでも学生に書いてもらうレポートやアンケートの類で感じる事はできたが,今回のアンケートはそれが非常にクリアに現れている。

できれは,こうした振り返りはすべての科目で実施して,それを蓄積し,教員間で共有できるようになれば,学生の成長に応じたきめ細かい指導ができるようになるのではないだろうか。

学習カルテのような試みはすでにあると思うが,各科目受講前の目標と,受講後の振り返りの二つだけでも蓄積・共有できれば極めて有用な気がする。

なお,このような振り返りアンケートのヒントとなったのは,アトウェルがライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップで学期末に実施している自己評価票だ。ライティング(書き方)の授業では,何篇の作品を書いたか,もっともよく書けたもの2つを挙げ,その理由な何か,などその学期に達成したことを具体的に聞いている。そして最後に,来学期,毎週何ページ書くつもりか,スペリングについは,などとそれぞれの項目ごとに目標を立てさせている。次学期は,それを基準に自己評価と教員による評価が行われる。(Nancie Atwell, In the Middle, 3rd ed., 2014)

もし点数を付ける必要がなければ,評価はこれで充分だ。アトウェルの学校では点数は付けない。大学ではそうも行かないが,点数を付けることよりも,こうした評価の方が大事だろう。今後も続けてみたい。

参考:[ITM]読み手を/書き手を評価する(1) 柱は自己評価(あすこまっ!)