工学の歴史

三輪修三『工学の歴史——機械工学を中心に』ちくま学芸文庫,2012年,329頁。

2017年3月3日読了。

遅ればせながら通読。意外なことに,「工学の歴史」(あるいは「工学史」)というタイトルの現在入手可能な本は,(おそらく)本書くらいしかない。私が「技術の社会史」の授業の教科書あるいは参考書に指定していた村上陽一郎先生の『工学の歴史と技術の倫理』は,もとは『工学の歴史』というタイトルだった。しかし,これは現在品切である。

著者の三輪氏も言っているが,科学史や技術史の本はたくさん出ているのに,工学史の本は皆無に近いというのは不思議なことだ。工学という分野が,いかに自らの歴史に無関心だったかがよく分かる。工学者は常に未来を向いているので,歴史を振り返る余裕がないのかもしれない。

本書は,副題にあるとおり,そして本書の前身が『機械工学史』というタイトルだったことからも想像できるように,工学と言っても,機械工学が中心の本だ。しかし,機械工学は工学全体のなかで重要な位置を占めているため,それをもとに工学の歴史を語ることはそれほど不当なことではないだろう。ただ,できれば,他の分野の工学まで目配りができているとなお良いが。

そろそろ工学の歴史とまじめに取り組んでみたいと思うようになった。本書の参考文献を手掛かりに,知識を広げたい。