イン・ザ・ミドル再読(2)

第2章まで読了。時間の確保と各種道具について。

ナンシー・アトウェル(小坂敦子・澤田英輔・吉田新一郎編訳)『イン・ザ・ミドル—ナンシー・アトウェルの教室』三省堂,2018年,368頁(原書第3版2015年)

第2章 ワークショップの準備

今学期の授業では,できるだけアトウェルの本に書いてある準備を実行しようとした。どれくらい実現できたか点検してみる。

時間を確保する

アトウェルの教室では,毎週4日,読書と執筆のワークショップがある。毎日,読書と執筆のそれぞれについて,最低20分程度の時間が確保されている。その他に,毎日最低30分読書を,週末に1時間執筆をすることが宿題として課されている。合計すると,毎週最低290分(5時間弱)の読書と140分(2時間強)の執筆の時間が確保されているのだ。

さて,今学期の私の場合は,毎回の授業で読書または執筆のために最低20分毎日最低20分の読書週末1時間の執筆を課した。合計すると,毎週150分(2時間半)の読書70分(1時間強)の執筆の時間が確保されていたことになる。ただ,宿題としての読書と執筆を行わなかった学生も少なくないようなので,実際には授業中の20分間の読書または執筆となっていたかもしれない。これでは,時間を確保する点でまだまだ不十分だ。しかし,前期と違って,読書や執筆のペースは自分で決められたので,学期末以外は時間に追われることはなかったと思う。学期末は,提出物のノルマ(書評・小レポート・期末レポート各1篇)を果たすために時間に追われた学生は少なくないようだ。ノルマをさらに減らす必要があるかもしれない。

来学期は,さらに時間を確保したい。今考えているのは以下の通り。

  1. 講義     30分(ブックトークを含む)
  2. 読書時間   20分
  3. ミニレッスン 20分(分割して,読書時間の前に入れることも)
  4. 執筆時間   25分(編集会議を含む)
  5. 学びの軌跡   5分

これだと,読書と執筆で合計45分。今学期の2倍となる。

教室

アトウェルの教室は,美術教室のように作品を書くための道具や材料がたくさん用意されている。また,読書のための本も豊富に揃えてある。さらに,ロッキングチェアやクッションがあるなど,日本の通常の教室とは全く雰囲気が違う。

このような教室を大学で用意することは難しい。特に問題なのは,読書のための本だ。教室にジャンル毎にまとめられた本があり,またお勧め本コーナーにも生徒によるお勧めの本が置かれているといったところでは,すぐに本を手にとって読書に入れる。大学では,まず図書館に行って多くの本の中から自分が読みたい本を探さなければならない。今学期の授業では,最初に図書館の本の検索方法を教えて,検索をしてから図書館で本を探すように言ったが,それで本当に読みたいと思える本に出会えるかどうかは分からない。これは今学期の最後に聞いてみるべきことだろう。私ができそうなことは,ジャンル毎にまとめた本のリストを提示すること。教員からのお勧め本や受講者同士でお勧め本を紹介できるようなコーナー(ウェブ上に)をつくること。ブックトークをすること(できれば受講者によるものも)。こうしたことを来学期に挑戦してみたい。

アトウェルは本の中でワークショップ・ノートという100ページほどのリングノートを用意させている。そこに読みたい本リスト,題材リスト,ミニレッスン,ジャンル研究などの内容を書かせたり,アトウェルが配布した資料を貼らせたりしている。

今学期は,ワークショップ・ノートに書かせるようなことをプリントにして配った。これをファイルさせるか,ノートに貼らせれば,ワークショップ・ノートのようなものになっただろうが,多くの受講者はただクリアファイルに挟んでいるくらいだった。来学期は,配布したプリントをまとめて冊子に印刷し,書き込んだり貼りつけたりするスペースも確保したワークショップ・ノート(仮題『読書と執筆を通して主体的に学ぶワークショップの手引き』)を使わせたいと考えている。

アトウェルは生徒に7種類のファイルを使わせているとのことだが,今学期はそうしたファイルは特に使わせなかった。来学期,上記の『手引き』を使わせれば,読書ファイル,詩のファイル,散文ファイルの3つは不要となるだろう。書き取りファイルと宿題ファイルは大学生には不要だろうから,残るは執筆中ファイル完成作品ファイルだ。これらはあった方がいいと思うので,来学期は用意させるように言いたいと思う。ただ,私の授業の場合は,草稿や完成作品をブログに投稿させることになっているので,ブログがファイルの役割を一部果たしている。

アトウェルは教師用の道具として,今日の予定表とチェック・イン表を使っていた。これらはそれぞれ,ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップの際の個別指導に利用していたものである。生徒個々人の執筆と読書の進捗状況を管理するためのものだ。

今学期,これに対応するものとして,読書と執筆のそれぞれについて,「学びの軌跡」を各授業の最後にクラスブログに投稿させた。これをいろいろな形で一覧表示させると,個人の進捗状況を時系列で追うこともできれば,クラスの進捗状況を俯瞰的に見ることも可能である。私の場合,これを個別指導に生かすことはまだできなかったが,多人数クラスでも実行可能な方法なので,これは今後も続けていきたい。

アトウェルは,ワークショップの最初に,読書と執筆のそれぞれについて教員の期待やルールの資料を配布し,ミニレッスンを行っていた。また,これらの資料を読書ファイルや執筆中ファイルに綴じておいて常に目にするようにしていた。

今学期,資料を配布して,ミニレッスンを行うことは実行した。ただ,常にそれを目にするようにはしていなかったので,効果は薄かったかもしれない。『手引き』に入れれば,より目に入りやすくなるだろう。

以上,アトウェルの方式は今学期それなりに導入できたと思う。改善の余地はあるので,さらに工夫したい。

【天気】雨のち晴れ。真冬のよう。