’08年度前期 授業の反省

今学期も,授業が終わりかけた時点で今学期の反省をする。

全体的に

本学に赴任して4年目に入り、授業が新しいステージに上がったように思う。先学期から授業内レポートなど新しい試みを始めたが、それが少し成果を上げはじめたようだ。学生の反応も思ったより良い。

授業内レポート方式について

先学期に引き続き,授業内レポート方式をいくつかの科目(「技術者倫理」と「科学の社会史」)で採用した。

技術者倫理では,前学期同様,毎回レポートを書いてもらった。このやり方で特に問題はなく,前回同様回を重ねる毎にレポートは良くなっていった。

科学の社会史では,毎回ではなく,講義3回に1回程度(合計3回)の授業内レポートを書いてもらった。これは,一つには受講者が多いため毎回では次の回に返却できないこと,また現在の講義の内容を教えるには毎回30分程度の講義では足りないこと,さらに各回の感想も知りたいし,受講者間で共有したいということもあったためである。

この変更は悪くなかった。授業内レポート方式は,授業の最後にレポートを提出しなければならないという緊張感が重要なのだが,当初はそれがなくなることを心配していた。しかし,最初の頃こそ受講態度に問題がある受講者が見られたものの,次第に受講態度はよくなっていった。

なお,回数を減らしたにもかかわらず,次の回に返却するということは,第1回と第2回では実現できなかった。他の授業の準備や学会関係の作業が立て込んでいたためである。全ての授業が軌道に乗ってくれば,次の回に返却することも不可能ではないだろう。

授業サイトについて

先学期までMoodleを用いて授業サイトを構築していたが,今学期はまたMovableTypeに戻してシンプルな授業サイトを作った。非公開の授業資料(スライドなど)はパスワード保護をかけた。ログインなどの面倒な手続を要せず簡単に授業サイトを見ることができることは良かったと思うが,受講者にどれだけ活用されたかは授業評価アンケートの結果を見なければ分からない。

途中からシステムをMovableTypeからWordPressに変更したが,デザインやコンテンツはそのまま継承している。WordPressはオープンソースで無料であり,また使い勝手もよいので,このまま続けて使っていきたい。

講義について

授業方法は,基本的にパワーポイントを見せながら解説するという形をとった。途中,ビデオを見せることもあった。あまり講義が長く続かないよう配慮したつもりである。

「科学技術コミュニケーション」の内容について

これは,今学期初めて実施した講義であり,内容を一から作っていった。技術者をめざす本学の学生向けに,一般的に行われている科学技術コミュニケーション関係の教育とは異なる内容にした。

すなわち,第1部では非専門家に分かりやすく説明する方法をマニュアル制作を例に扱い,第2部では人々の不安に応える方法をリスクコミュニケーションを例に扱った。前者ではデジカメのマニュアルを評価する演習,後者では牛丼チェーンのBSEリスクに関するウェブページを評価する演習を取り入れ,また,班活動とクラス発表も行い,できるだけ実践的な内容にするよう心掛けた。最後の2回は第3部として,サイエンスカフェなど最近の話題を紹介した。

初めての授業としては,まあまあの出来だったのではないかと思っている。特にBSEと牛丼チェーンを取り上げたのは良かったと思う。リスクコミュニケーションの素材として面白かった。

「フレッシュマンセミナー」の内容について

教科書は昨年までとほとんど同じ内容なのだが,授業の方はかなり独自色を出して実施した。昨年度と異なるところは,まず昨年度軽くしか扱わなかったアサーショントレーニングを1回の時間を取ってしっかり実施したこと。また,後半のレポートの書き方に関する進め方を教科書とはほぼ逆に進めたこと(文の書き方から初めて,最後にレポートの構成法に至るのではなく,先にレポートの構成の話をして,それから段々と細部に至るように)。この方法が良かったのかどうかも,学生の最終レポートと授業評価から判断したい。

「科学の社会史」の内容について

科学の社会史の内容は,昨年度までの「科学技術史A」とほとんど同じで,古代から現代までの科学の社会的側面の歴史を通史的に扱った。授業内レポート(「まとめのレポート」と呼んだ)が3回入る分,講義時間が減るのでその分の内容を減らした。また,後期の「技術の社会史」と重複するような内容も簡略化したが,話のつながり上必要なので全く省略することはしなかった。

今学期は,一部のクラスで14回の授業回数が確保できた。同一科目で教える内容が異なることは不公平になるので,14回目は「おまけ」としてビデオを見せることにした。それまでの授業では短く編集したものしか見せられなかったが,このおまけの授業では学生の希望を聞いた上で,授業に関係のあるビデオを丸々見せることができた。このような授業もいいなと思った。できれば全ての授業で最後の回はこのようなものにしてもいいかもしれない。

「技術者倫理」の内容について

前学期とほとんど同じである。そろそろアップデートが必要かも知れない。

成績評価について

今学期も,定期試験は実施せず,授業内レポートなどレポートでの評価をメインにしている。一発勝負の定期試験とは異なり,何回も提出されるレポートは回を重ねる毎に良くなっていくので,調整をせずともそれなりに良い成績が出るものと期待できる。ただ,剽窃に対しては厳しく対応しているので,それによる平均点の低下はあるかもしれない。

 <技術者倫理> SとAの割合が41%とかなり高く,Dは6%と低かった(データ)。受講者が17名と少なく,また社会人学生が多かったとはいえ,これまでにない好成績となった。受講者によるこの授業の評価も比較的良かった。授業内レポート方式の成果と言えよう。(7/10追記)

 <科学技術コミュニケーション> こちらもSとAの割合が37%と高かった(データ)。今回は,授業にちゃんと参加していたかどうかで成績が上下するような評価法なので,全体に高めの結果となった。理解の度合いなどもきちんと評価できるような評価法を考える必要があるだろう。簡単な試験をするのがよいかもしれない。(7/11追記)

<科学の社会史(科学技術史A)> こちらもSA割合が38%と高かった。実は,これは調整した結果で,素点では更に高い値だったのだが,若干下方修正した。このようなことは初めてだ。(7/16追記)

【天気】晴れ。