2019年の読書を振り返る

私が昨年(2019年)に読了した本は,一昨年と同じ35冊。読みかけた本を含めると50冊(一昨年は51冊)。自分のために振り返る。

この十年ほど,研究関係の本よりも教育関係の本を多く読んできたが,昨年後半からは研究関係の本を多く読むようになった。科学技術史を専門とする者としては遅きに失しているのだが,中岡哲郎の本を系統的に読み始めた。中岡の原点を知る上で参考になる三一新書の『現代における思想と行動』(1960年),技術論である『人間と労働の未来』(1970年),『工場の哲学』(1971年),『技術の論理・人間の立場』(1971年),『技術を考える13章』(1979年)など。技術史関係の著作はこれからだ。

また,山之内靖の『総力戦体制』(2015年)を読んだことをきっかけに,『日本の社会科学とヴェーバー体験』(1999年)など山之内・総力戦体制論関係の著作をいくつか読んだ。山之内らの著作は以前にも読んだことはあったが,戦争と科学技術の関係を捉える際の枠組みとして,総力戦体制論をもう一度しっかり学んでおこうと考えた。

山之内の著作もそうだが,現代社会を捉える際に歴史の流れを大づかみに把握するもの(歴史社会学というのだろうか)として,雨宮昭一『占領と改革』(2008年)や小熊英二『日本社会のしくみ』(2019年)も読んだ。

昨年の前半は,電子書籍の可能性を考えるため電子書籍関係の本もいくつか読んだ。ボイジャー社の萩野正昭の本,『これからの本の話をしよう』(2019年)などは,ボイジャー社が電子書籍と格闘して到達した現時点のあり方を理解する上で役に立った。関連して,津野海太郎『電子本をバカにする亡かれ』(2010年)や秦隆司『ベストセラーはもういらない』(2018年)も参考になった。

一昨年に引き続き,昨年前半は,教育関係の本も読んでいる。アトウェル流の読書・執筆ワークショップを授業でやることは挫折したのだが,その代わりにウィギンズ『最高の授業』(2018年)で紹介されたスパイダー討論を試してみてうまく行ったので,昨年度の授業ではこれを一つの柱にした。討論と並んで,資料読解や文章執筆も大事なので,アロンソン他『ジグソー法ってなに?』(2016年)やGraff/Birkenstein, They Say/I Say (4th ed. 2018)も読んで,聞く・読む・話す・書くの4技能を関連付けた授業を行いたいと考えた。

(以上敬称略)

今年(2020年)はさらに研究にシフトした読書を進めていきたいと考えている。この十年間のブランクを埋めるのは大変だが,私個人にとっては新たな発見をすることが多く楽しいものだ。

【天気】晴れ。年末年始は,比較的温かく穏やかな晴天だった。