2018年の読書を振り返る

私が昨年(2018年)に読了した本は35冊。読みかけた本を含めると51冊。自分のために振り返る。

昨年は,教育関係,特に国語教育関係の本をたくさん読んだ。その中でも特に私の考えに影響を与えたのは,アトウェル『イン・ザ・ミドル』(2018年)とGraff/Birkenstein, They Say/I Say (4th ed. 2018),それに大村はまの本(例えば,『日本の教師に伝えたいこと』2006年)だ。今年邦訳が出たアトウェルの本は,読書と執筆のワークショップのやり方を自分の長年の実践に即して詳しく記述している。大村はまはワークショップという形を超えて,戦後の生活単元学習の方法の可能性を最大限まで追究している。その出発点は違っても,行き着くところはかなり似たものとなっている。Graff/Birkensteinは学術的な文章の執筆の型を具体的に教えるという実践で,これまでベールに包まれていた学術的な文章の執筆の方法の指導に画期的な進展をもたらした。これらの国語教育の実践は,けっして国語教育に留まらず,あらゆる科目の授業の革新に役立つ内容を持っている。私はこれを科学史教育に導入したいと考えた。

歴史や学問を研究することの意味を考えさえてくれたいくつかの本(著者)に出会った。一つは,白井聡の本で,『永続敗戦論』(2013年; 文庫2016年)と『国体論』(2018年)。『永続敗戦論』はかなり話題になったので以前から気になっていたが,昨年前半に読んだ。もう一つは,富安歩の本で,『満洲暴走』(2015年)である。どれも,現代の日本を分析するのに,歴史を利用している。歴史を学ぶ者として,現代に切り結ぶ文章を書くことへの刺激をもらった。

自分の専門(科学史)関係では,岡本拓司『科学と社会』(2014年)と山本義隆『近代日本一五〇年』(2018年)を読んだ。前者は学会誌に書評を書かせてもらった。岡本の本は,地味な感じの本だが,歴史に切り込む視角がユニークで,多くの刺激をもらった。テレビドラマの原作に使えるようなおもしろさもある。山本の本は印象が薄い。

(以上敬称略)

今年(2019年)はどのような本で出会えるであろうか。学生にできるだけたくさん,できるだけ楽しんで読書することを勧めているのだから,私自身もそれを心がけたい。

【天気】晴れ。年末年始は,寒いながらも穏やかな晴天だった。