'10年度後期 授業の反省

 今学期も,授業が終わりかけた時点で授業の反省をする。

全体的に

 今学期は,いくつもの新しい試みをした。その効果は,成績評価や授業評価の後でないと十分評価できないが,少なくとも全体的に以前よりも悪くなったということはないと思う。

授業関係資料の公開

 今学期の最も大きな試みは,授業関係資料の公開をこれまでよりも進めたことだろう。これまでも,授業の概要や参考資料情報については,授業サイトで公開してきた。しかし,授業中に配布したプリントや授業ラジオ(講義の録音)はパスワードで保護し,一般公開はしてこなかった。今学期は,講義メモや授業ラジオの一般公開に踏み切った。さらに,総合演習のレポート指導では,Ustreamを使い,動画による添削の公開も試みた。これまでは,個別面談で行っていたことだが,自分のレポートのみならず他人のレポートの添削も見ることができることは,より教育上有効なのではないかと考えたためである。さらに,この授業を受講していない人も見ることができることから,一般の人が大学でのレポート指導の一面を窺い知ることができる機会となろう。なお,こうした授業関係資料公開の際にはTwitterを用いて広報した。

C-Learningの導入

 2つ目の試みは,C-Learningという携帯電話でもアクセス可能な授業支援システムを導入したことである。今学期は初めての試みなので,受講者が10名前後と少人数の1クラス(科学技術コミュニケーション)でのみ利用した。様々な機能が使えるのだが,今回利用したのは,出欠確認・アンケート・レポート提出・教材倉庫・掲示板・ニュースの6つである。特に毎回利用したのは,出欠確認とアンケートだ。また,2回のレポートの提出もこのシステムを使った。まだ十分使いこなせてはいないが,うまく使えれば授業が活性化できるように感じた。

印刷資料の配布取り止め

 これまでは,講義メモや参考資料を印刷して授業で配布していたが,それを今学期は原則として取り止めた。印刷と配布に手間と労力と時間がかかるということもあるが,学生に電子的な形での資料の利用に慣れさせたいという思いがあった。実際,授業で使う資料をネットで配布することが一般的な学科も存在する。多くの教員がそのような方法をとれば,紙資源の節約にもなるし,資料紛失といった不都合もなくなるだろう。授業中にパソコンで資料を見ている学生も少数だが見られた。ちなみに,本学では入学者全員にノートパソコンの用意・購入を半ば義務化している(実際に授業で活用する機会は少ないため,入学時のパソコン購入に関する学生の不満が少なくない)。また,自分でプリントアウトしたものを持参する学生もそれなりに見られた。印刷資料を要望する学生もいるが,そのねらいを十分に説明して印刷資料なしの試みをもう少し続けたいと思う。

授業ラジオ

 昨年度後期から始めた授業ラジオは3学期目となった。「技術の社会史」と「科学技術と倫理」の2科目で実施したが,今回は「科学技術と倫理」の講義部分も配信した(これまでは授業冒頭のコメント紹介のみを配信していた)。また,今学期は授業ラジオの特設サイトに加えて,通常の授業サイトに授業ラジオの再生ボタンを設置したことで,より使いやすくなったのではないだろうか。

講義内容について

 「技術の社会史」「科学技術と倫理」「科学技術コミュニケーション」「技術者倫理」の講義内容は,これまでとほとんど変えていない。方法面での新しい試みを進めたため,内容の改訂までには手が回らなかった。来年度は内容面でも多少新しい試みをしたいと考えている。

 夏期集中講義から始まった「総合演習」では,「デジタルネイティブと大学」という新しいテーマに挑戦した。ちょうど私自身が関心を持っているテーマであり,かつ今の学生がどのように考えるのかを知りたかったため,楽しく授業をすることができた。この授業自体,授業ブログUstreamを活用して新たな可能性を探ってみた。教員も学生もまだ不慣れだが,少なくとも失敗ではなかったように思う。

評価方法

 評価方法も基本的に前学期と同様の方法を採用している。「技術の社会史」では,学期中に3回ほど「まとめのレポート」を授業時間内に書かせて,後日採点の上返却をした(第3回のみ原則として返却せず)。これは短期間に大量のレポートの採点や添削をせねばならず,体と頭を酷使することから,今学期で終わりにしようかと思う。多人数のクラスでのこうした指導は体力がないとできない。

2/19補足

 冒頭で,「少なくとも全体的に以前よりも悪くなったということはないと思う」と書いたが,成績評価と授業評価が終わったあとで,もう一度この点を検討する。「技術の社会史」は,成績評価が昨年度並みで,授業評価は昨年度より少し良くなった。「科学技術と倫理」は,成績評価が先学期より少し良くなり,授業評価は先学期より少し悪くなった。「科学技術コミュニケーション」は,成績評価が先学期より少し良くなり,授業評価は先学期より少し悪くなった。なお,「技術者倫理」は,今学期の受講者が3名と少なかったため,以前との比較は控えたい。

 こうしてみると,全体的に授業評価は少し下がったものの,成績評価は少し上がっており,全体的に悪くなったとは言えないと思う。大きな変化に注目すると,まず全体的に授業サイトの利用頻度が大幅に上昇した。これは,紙の資料を配布せず,授業サイトのみで配布した結果だと思う。授業サイトの有用性についても高い評価を得ているので,使ってみれば有用だということを学生は気づいてくれたのではないだろうか。他方で,「科学技術コミュニケーション」の授業評価アンケートでは,「資料」についての評価が大幅に下がったが,これもそれまで紙の資料を配布していたのをやめたことによる結果だと思う。パソコンを授業に持参したり,事前に資料を自らプリントアウトして持参するなど,自ら手元に資料を用意することをしないと,授業中に使える資料はスクリーンに映ったスライドのみなので,資料が不十分だと感じたのかも知れない。対応としては,以前のように紙の資料を配布するのではなく,自分で用意するよう強く促すことをしていきたい。

【天気】晴れ。気持ちの良い青空だ。

  • 15:05  ブログに「’10年度後期 授業の反省」を書きました。 http://bit.ly/hg83wP
  • 16:40  今日の「技術の社会史」の授業ラジオを掲載しました。今学期最終回なのでまとめを行いました。 http://bit.ly/encEbZ
  • 17:07  今週の「科学技術と倫理」の授業ラジオを掲載しました。テーマは「核兵器と市民」です。 http://bit.ly/efrYo7