技術からみた人類の歴史

山田慶兒『技術からみた人類の歴史』編集グループSURE,2010年,188頁。

2017年1月29日読了。

今後の科学技術史の講義を考えるために,しばらく人類史的なスケールを持った科学技術史の本を読んでみようと考えて,たまたま未読の本書を読んだ。

山田慶兒氏は,独特のスタイルで科学史・技術史を研究してこられた方だ。東洋の話など,私が疎い分野に強いので,新たな刺激を受けられるだろうと期待した。

人類の歴史は,技術面から見ると,旧石器時代,新石器時代,ルネサンス以降現代までの3段階に分かれるというのは,全く思いもよらなかった時代区分。しかも,新石器時代の技術は今ようやく新しい技術に取って代わられ,消滅しつつあるという(たとえば伝統的な大工道具)。

技術者にとって本当に必要な教養は,「何のための技術か」を考えられることだと思う。そのためには,技術のことと並んで,人間のことを知らなければならない。技術によって人間がどう変わり,その人間が技術をどう変えたか。その歴史を見通しよく講義できる視点を持ちたいと思う。

本書には,講義録の他に,1969年に『デザイン批評』に発表された「土法の思想――操作としての技術から思想としての技術へ」が収められている。「つくる行動が豊かさを回復するためには,つくる目的を設定する権利と機能が,つくる人間の手中に掌握されなければならない」。つくる目的を設定できるような技術者を育てること。これを授業の目標にしたい。