15回確保問題(2)

 昨日の15回確保問題の書き込みをTwitterでアナウンスしたところ,一日で600を超えるアクセスがあった。いかにこの問題についての関心が高いかがよく分かる。

 さて,さらに調べてみると,この問題については最近進展があって,この4月1日施行の大学設置基準改正があった。ネット検索してもなかなか出てこなかったが,官報(平成25年3月29日官報号外第66号)を調べたら出てきた。文部科学省令第13号(平成25年3月29日)の「大学設置基準及び短期大学設置基準の一部を改正する省令」だ。それによると,大学設置基準の第23条は次のように変更になった。

【旧条文】
(各授業科目の授業期間)
第二十三条  各授業科目の授業は、十週又は十五週にわたる期間を単位として行うものとする。ただし、教育上特別の必要があると認められる場合は、これらの期間より短い特定の期間において授業を行うことができる

【新条文】
(各授業科目の授業期間)
第二十三条  各授業科目の授業は、十週又は十五週にわたる期間を単位として行うものとする。ただし、教育上必要があり、かつ、十分な教育効果をあげることができると認められる場合は、この限りではない

 この省令改正に関わる中教審の分科会・部会での議論は以下の通りである。

大学教育部会(第23回)2012.12.27
資料2 柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について(pdf)

 関係する議事録抜粋。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは資料2ですが,柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について御説明させていただきたいと思います。これは,前回も資料を御用意させていただきましたが,時間が足りずに,御議論いただく時間がありませんでした。今回は,前回の資料から更に詳細なものに変えまして,もう一度改めて御説明させていただければと思っております。
 資料の2ページですが,授業期間に関する大学設置基準の関係の規定の改正の経緯です。昭和31年に,最初に大学設置基準ができたときですが,このときは「単位の計算方法」という項目の中で,毎週1時間15週の講義をもって1単位とするということで,毎週必ず1時間15週という,大変厳格な規定でした。その後,昭和48年に「授業期間」という項目に別途新しい規定ができまして,単位については,「15時間の講義をもって1単位」という現在の考え方,そして授業期間として「10週又は15週にわたる期間を単位として行う」という期間の考え方が,ここで別途置かれることになりました。平成3年にはただし書きが改正されまして,従前は外国語の演習,体育実技等の授業についてという例示があったものが,「ただし,教育上特別な必要があると認められる場合」には10週,15週でなくてもいいという規定に変わってきた経緯です。
 3ページにお進みいただきたいと思います。授業期間に関する最近の議論の状況ですが,大学設置基準では,皆様御案内のとおり,講義であれば15時間の講義が必要となっているということですが,この15時間の中に,定期試験の時間を含めていいのかどうかということについては,必ずしも明確でないところがありました。この点,平成20年の,いわゆる学士課程答申の中では,講義であれば1単位当たり最低でも15時間の確保が必要とされる。これには定期試験の期間を含めてはならないというような記述がなされたところです。この記述もある意味,当然といえば当然の記述ですが,この答申を踏まえまして,特に認証評価機関では,定期試験を10週,15週の期間に含めているような場合には改善するように,各大学に対して指摘をするような事例が見られるようになったというところです。
 現在,多くの大学では,講義15週の後に別途定期試験期間を設けるというようなやり方をされていらっしゃいますが,例えばここに,ある大学の例を載せておりますとおり,春学期を非常に早い段階,4月の第1週から開始して15週をとって,更に定期試験期間も1週間にしても8月まで食い込んでしまうというのが,多かれ少なかれ多くの大学の実情ではないかと存じます。このために各大学では,例えばハッピーマンデー対策として土日等に振りかえの授業を行うとか,いろいろな御苦労をされているところかと存じます。
 4ページですが,これまで,特に平成23年の10月から12月にかけまして,本部会でもいろいろ御議論をいただいてきました。その中で出された御意見としましては,15週プラス定期期間試験が確保されているかという認証評価機関における評価が,若干形式面の評価を重視するものというふうに大学で受けとめられてしまっているのではないかとか,あるいは8月までとにかく日程を確保するように頑張っているが,本当にそれが学修の実質化につながっているのかというような御疑問。あるいは,もしその15週プラス定期試験期間を無理に確保しようとすると,例えば定期試験を行わないで,レポート重視の授業に移行してしまうのではないか。そうしたレポートの授業が増えていけば増えていくほど,一つ一つのレポートの内容というのも薄いものになってしまうのではないかという,ある種のモラルハザード的なことが起こるかもしれないのではないかというような御懸念。さらに,週1コマを15週やるという,設置基準が当初想定していた授業形態だけでなくて,アメリカで行われているような,週複数回授業を行って,ある程度短い期間で完結するというような,現在の若干硬直的に見られるような仕組みを弾力化して,多様な授業の在り方を認めていくべきではないかというような御意見をいただいていたところです。
 こういった御意見を踏まえまして,5ページのところですが,10週又は15週という,2学期制,3学期制に相当する学期の原則は維持しながらも,従来主流であった週1コマ,15週,講義授業という授業の在り方については,より多様化を推進するために,弾力的な授業期間の設定を可能にしていきたいと思っております。特に平成24年8月に答申がありましたが,講義が悪いというわけではないのですが,一方向の知識伝達型の授業から,教員と学生が双方向に意思疎通が行えるような主体的な学び重視の授業に転換していただきたいということをその際に考えたいと思っております。
 なお,誤解があってはいけないと思いますが,今回の改正については授業期間を弾力化するものでありまして,例えば講義1単位13時間でもいいとかいった基本的な部分を変えるものではなくて,あくまで平成20年の学士課程答申の考え方については,これを踏襲していきたいと考えております
 具体的な改正の方向性ですが,従前の規定では,教育上特別な必要があると認められる場合には,10週,15週より短い期間で授業を行うことができるとされておりましたが,この要件を例えば教育上必要かつ適当と認められる場合には弾力的な運用にするとか,あるいは10週,15週より短い期間だけでなく長い期間,例えば医学部などで行われているような20週とか23週とかを単位とした授業もあるかと思いますので,そういった期間についても明示的に認めていってはどうかということです。
 6ページのところですが,設置基準によって,では具体的に何が変わるのかというところについて御説明をさせていただきたいと思います。実はこの規定に関しては,現在でも教育上特別な必要があると認められるときには,10週,15週でなくてもいいというような規定は置かれております。ただ,以前の設置基準では語学であるとか体育実技といったことがこの例外の典型例とされていたこともありまして,多くの大学では,教育上特別な必要がある場合ということで,限定的な解釈といいますか,運用がなされてきたと理解しております。教育上特別な必要があるという要件を緩和しますことで,例えばここに,想定される具体的な事例と書いておりますが,週複数回授業。例えば今,早稲田大学などでもいわゆるクオーター制というものが御検討されていると思いますが,8週を全ての授業科目の原則とするような形の,いわゆるクオーター制の実施も明示的に可能になるかと思いますし,また例えば1コマ当たりの授業時間を若干長くすることで,これまで15週で行っていた講義授業を13週にまとめるとか,あるいは様々な授業形態の組合わせ,これも従前から可能ではありましたが,授業期間を弾力化することによって,例えば13週で,講義については週1回1コマ終わらせて,例えば特定のお休みの日にゼミなどフィールドワークに行ったりというような形もあるでしょうし,あるいは答申でも重視されているサービス・ラーニングですが,例えば6週間1時間の講義を毎週行った上で,1か月間,地域での社会奉仕活動をする。そして,その上で最後に振り返り学修をして,トータルでは11週間で授業を完結するといった多様な授業の在り方が可能になってくるのではないかと考えております。もちろん長い期間についても,例えば医学部等だけでなくじっくりと理解を深める。特に自学自習の部分を重視して,宿題など,自分の主体的な学びの部分を重視して取り組むような授業については,あえて20週とか長い時間をかけるということも可能にしたいと思っております。
 最後,7ページですが,弾力化に伴う質保証ということで,これまで認証評価機関で,きちんとアカデミック・カレンダーについて確認をしていたと存じますが,もしこういった弾力化がなされることになりますと,必ずしもそれが外形的に確認できず,質保証の面での御懸念も生じようかと思っております。この点につきましては,引き続き授業期間の原則10週又は15週であって,弾力化があくまで例外であることについては変わらないということは基本的な考え方です。また,講義当たり,講義であれば1単位当たり15時間ということも変わらない原則でして,仮にこれを弾力化した場合においても,単位の修得に必要な授業時間数,例えばサービス・ラーニングでありますとか,先ほどのフィールドワークといった場合においても,トータルできちんと必要な単位時間が確保されているということは,きちんと各大学で御説明をいただく必要があるということは前提です。
 また,どういった場合に授業時間の弾力化が認められるのかということですが,これも当然何でもありということではありませんでして,教育上合理的な必要性があって,かつそのことによって,週1コマ15週というような原則どおりの授業を行う場合と同等以上の,きちんと教育効果があるということについて,やはり大学側できちんと御説明をいただけるということが前提になろうかと思っております。こういった前提のもとに,各大学や認証評価機関にもこの改正の内容についてお伝えをしていきたいと思っております。

【田中委員】  御提案には大賛成ですので,是非お進めいただきたいのですが,そこについて早稲田大学でも同じ考え方で臨んできておりますので,その背景について少し御説明申し上げたいと思います。今の中では非常に重要なポイントだと思いますのは,資料2の4ページ目の丸の4番目のところですが,単に週1コマ15週の授業だけでなく,例えば週複数回授業を行って3か月程度で完結する授業などということが可能になるということなのです。このことは,私が早稲田大学の中でクオーター制を提案したときの背景にもありますし,セメスター制を全学部で徹底した背景にもあります。
 というのは,私自身の経験ですと,アメリカに留学したときに非常に新鮮に思いましたのは,ワンセメスターで1科目が終了する。私は当時1975年,昭和50年卒業でしたので,当時の日本の大学の経験では,1週間に1回の授業で通年の授業をする。35回もしくは30回の授業をするということでしたので,常に,1週間に持って歩く教科書は多くて14種類,少なくても10種類です。3年生ぐらいでも10種類です。ですから,十三,四種類の科目をいつも抱えていて考えていくということです。週に1遍それを学ぶということですから,内容を忘れてしまい,効率が悪い。アメリカの場合のセメスター制ですと6科目から多くて7科目ぐらい,少なければ5科目ぐらいです。5-7科目ぐらいの教科書のセットを持って勉強している。そのかわり週2回,3単位科目であれば週3回の授業をやっていましたし,5単位科目であれば週5回の授業をやって,50分授業を5回やっておりました。そのように集中的に教育を受けるということを学んでいました。それで,クオーター制の大学では10週でしたので,一遍にとる科目が3科目ぐらいに減るわけです。そして,3科目で,5単位だったら週5回,3単位だったら週3回の授業をやるというような,相当きっちりと授業回数と単位数を合わせて教育をしているということを経験しました。
 そこで,私どもが今考えておりますのは,例えば8週で終わるということはどういうことかというのは,早稲田大学では平成21年に,セメスターで15回の授業を徹底し,16週目に期末試験にするということを徹底して各学部にお願いをしてまいりました。私が教務部長のときにそれを進めたのです。その考え方というのは,要するに授業回数を重要視しておりまして,週数ではないと考えています。ですから,15週であるかどうかよりは,15回の授業をすることが重要なのであるということです。ですから,ワンセメスターで4単位提供する場合には,例えば月,木と,90分授業を2回やるということになります。90分授業2回で4単位,ワンセメスターでやるならば,8週間で中間試験のところを半分で切れば,8週間で15回の授業ができるわけです。15週あれば30回授業をやるわけです。8週間で15回の授業をやって1回の期末試験ができるということなので,8週であったとしても15回の授業というものが確保できる。そこで2単位提供ができると考えるわけです。なので,単位と授業回数が重要なのであって,週数が10と15というのは,特別な場合のような,夏期集中講座とかいうものだけに限られるのではないと考えておりまして,ここは弾力化いただきたい。ただ,その背景にありますのは,いかに教育の質を上げるか。学生が14科目とか10科目に分散している科目の集中を,セメスターであるならば5とか6とかに,クオーターであるならば3とか4とかに集中して学ぶということになるのだろうと思っております。ですから決して甘くするとかサボるということではなくて,いかに効果的な教育をするかということで,こういう御提案をいただいているのは大変ありがたいと思っております。

【長尾委員】  資料3の,先ほど示されました表のページに,柔軟なアカデミック・カレンダーの設定の議論は第6期で,平成24年11月12日と書いてありますが,私の記憶では,これは平成22年,本当に6期が始まったときからずっと議論をさせていただいていて,そして,とてもいい方向に向かい,明文化されたと大変うれしく思っております。今,田中委員がおっしゃったように,教育の質からアカデミック・アワーに,カレンダーの方向に向いていく。その,間の議論の中には,実質的な学修時間という言葉をあえて入れました。おっしゃったように,短くしていくのではなくて,本来あるべき姿に戻そうという議論がなされていった。そして,この結論が出たということは大変うれしいことだと思っているのですが,私の大学の場合には,例えば管理栄養士を出す管理栄養学科とか,幼児教育心理学科,つまり保育園の先生の資格を出すとか,つまり厚生労働省絡みのところがありまして,そして今,厚生労働省の方が帰られたのがいかにも残念なのですが,文部科学省はこれだけの柔軟性を持って対応していこうとしている中で,厚生労働省はやはり15回のプラス1ということをずっと言って,出席簿も全て提出が求められるわけです。そうなると,大学の中で二つの,文部科学省と厚生労働省の管轄を抱えている大学は,アカデミック・カレンダーがダブルスタンスになっていくということなので,是非,以前もこの話はあったと思いますが,文部科学省と厚生労働省の連携をこの先持っていただけたら大変うれしいと思います。

【川嶋委員】  私も弾力化には全面的に賛成で,先ほど田中委員からもお話があったように,集中して学ぶという仕組みを各大学で工夫していただければいいと思うのですが,それを前提にして今回の資料で3点だけコメントさせていただきます。一つは,先ほどいみじくも田中委員から出ました,6ページに書いてある,8週を原則とする場合,いわゆるクオーター制の実施と書いてあるのですが,これはいわゆるクオーター制ではないのです。アメリカでは12か月を4で割ってクオーターとなるわけですから,1学期は3か月で10週から12週になります。実際に大学は1年,12か月のうち9か月稼働していますから,クオーター制というのは原則として三つの学期から成るということです。多分,早稲田大学がこうお呼びになっているのは,1年授業期間の35週を4で割ると8週になるのですが,それをクオーター制とお呼びになっているのだと推察します。そこで,私の一種の苦言は,こういう審議会の資料に,これだけ国際的通用性の重要性が繰り返し強調されているにもかかわらず,特殊な例をこういう形でいわゆるクオーター制と言ってしまうと,やはり国際的な誤解を招くということがあるのではないかと危惧します。
 2点目は,同じく6ページの,その次の1コマ当たりの授業時間の見直しの箇所で,13週間で1.2時間という例があるのですが,原理原則は1単位45時間で,例えば授業時間はそのうち15時間となります。ただ,実際の授業時間は,例えば2単位ですと,本来120分,授業時間を設定しなければいけないのが,実際には多くの大学が90分で,ディスカウントしています。もちろん,授業の集中力の問題もあり,本当に今の学生が120分授業を耐えられるかという問題もあるのですが,現実にはやはり制度と大きな乖離がある。これをどう考えるかという問題が二つ目です。
 それから3点目は,先ほど3ページの下の方の囲みの中で学事日程例が出ていましたが,非常に窮屈な日程になっています。これはやはり日本の大学は,1月,2月,3月を入学試験のために割いてしまっているので,実際の授業に使えないというところもあると思います。ですから,35週のうち,1月以降,12か月分の二,三箇月を入学試験のために授業に使えない状況です。ですから,余裕を持って集中的に学ぶということを今後考えるのであれば,入学試験の在り方も変えていく必要があるのではないかと思います。

【鈴木委員】  簡単に申し上げますが,私がおりましたICUも,3学期制というものを五,六十年やっているところで,そういう意味では身についてしまっているのですが,全体として私は,やはりこういう方向に行かざるを得ないと思っておりまして,遅きに失したという感じがあるのですが,この方向で行くというのは歓迎いたします。
 非常にテクニカルで,これが可能になった後にいろいろ問題が出てくるだろうというのは,一つには,やはりクオーターあるいはセメスターあるいはトライメスターでもそうなのですが,先生方のティーチングロードが非常に厳しいものですから,今はサバティカル制度というのは形骸化している面もありますが,やはりサバティカル制度というのを各大学は考えないとまずいのではないかと思います。そうしますと,何年に1度サバティカルを与えるということになりますと,例えばICUでは7年に1度与えていましたが,先生の数が7分の1,常時いない,足りないということになりますので,そのあたりのところをどうするかということです。
 それから,とにかくクオーター制とかトライメスター制というのは非常に先生の負担がかかってきますので,TAを育てるという意味からも,使うということが非常に重要だと思います。
 それから単位制,1学期に取れる最大限の単位ですが,今のような非常に曖昧な状況ではなかなか,3学期制,4学期制にしたときに,やはり教育の質の実質化,向上というのは図れないだろうと思います。ですから,例えばICUの場合には,標準が1学期13単位ですので,大体1学年で取れるのが35単位から40単位ということになっているのですが,そのあたりのところも議論をする必要があるだろうと思います。それから,川嶋委員がおっしゃった,日本的な試験やら何やらというのがありますので,そのあたりのスケジュールの込み合っているところを,どうこれと整合していくのか。これもテクニカルな面ではありますが,非常に重要なことだと思います。

【荻上委員】  随分時間をかけて議論をした結果,様々な誤解などがあったこの問題に関して非常に明快に整理をしていただけたと思います。その上で1点確認をしたいのですが,設置基準の27条に,試験の上で単位を与えると,試験の必要性が書かれていますが,これをどう解釈するのかということです。それからその関連で,定期試験期間というものを設けなければいけないのかどうか。今回,整理していただいた,最後のまとめられているところでは定期試験のことは明確に触れていないので,明確に触れていないということは,定期試験期間というものを置く,置かないは大学の判断でいいだろうと私は解釈しますが,そういうことでよろしいのでしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  まず設置基準27条の方ですが,単位の授与については御指摘のとおり,学修の成果を評価の上で単位を与えるということです。条文上は,試験の上,単位を与えると書いておりますが,当然レポートであるとか授業への参加であるとか,いろいろな形の評価も含めた上での単位の授与ということですので,ここにおいて,必ずしも全てに,当然ですが,試験をしなければいけないということではないと考えております。
 それから定期試験の期間ですが,これについて平成20年の学士課程答申で,授業の時間とは別に定期試験の期間を設けると書かれておりますので,基本的にはその考えに準拠すると思っております。通常であれば,当然定期試験という期間というのは,あくまで原則は10週又は15週というのが基本形であると考えておりますので,その場合には,通常であれば定期試験期間というのは15週の外に当然設けられるものであると考えておりますが,ただ,非常に極端な場合,全ての授業科目においてレポートを評価するとかいった場合において,定期試験期間が絶対になくてはいけないかと言われますと,そこについては,絶対に置かなければいけないとは言えない部分はありますが,それは非常に極端な例でして,通常であればここは当然,定期試験期間というのがあってしかるべきだと考えます。

【荻上委員】  私は,3ページの真ん中の四角の囲み,つまり学士課程答申の中で,定期試験の期間を含めてはならないと書いてあるのは,定期試験期間というものを設定するのであれば別にしなければいけないというように私は読みたいのですが,定期試験の期間を設定しなければならないと読むべきでしょうか。そこは随分違うと思います。そこを明確にしておかないと,今まで長年あった誤解が更にこの先続くことになると思いますので,定期試験の期間を設けなければならないのであれば,改正される設置基準の中にそういう記述をしていただきたいと思います。

【佐々木部会長】  先ほどの27条の試験を少し柔軟に解釈する,すなわち成績評価の方法・材料は多様でいいということであれば,定期試験期間を設けなければならないというと,これは矛盾を来します。27条を緩やかに解釈するのであれば,定期試験期間を設けなければならないという規定は出てこないと思います。いかがですか。

【濱名委員】  1年前に議論したときに,私はこの件では言ったのですが,要するに定期試験のときだけで評価をするような時代ではなくなっているから,総括的評価の必要性はあるものの,定期試験という形態以外もあり得るということです。今,部会長がおっしゃったような解釈で,そのときの議論は成り立っていると思うので,そのように確認していただければいいのではないかと思います。そうでないと,「ねばならない」のだったら,設置基準に関して,そこは変わらないのです。また15週プラス1週なり,何日間か定期試験期間を置かなければいけないので,趣旨の中にある,8月に入ってやっていることが,学修効果の点で疑義があるという問題が解消しなくなりますので,そこはきちんと確認していただきたいと思うのです。
 それともう一つ,総論的にはもう大変結構で,私ども申し上げてきたことが形になってうれしいのですが,他省庁のことが問題になっているのですが,省内にも同じような問題を抱えている部局があるので,これは省内でまず徹底していただきたい。例えば教職員養成分野です。1単位で8週とかで8週間で1単位出せますということを,行政指導の中でそういう助言を受けたことが私はありますので,いわば1単位,要するに8週で講義科目が成り立たせられるというようなことが省内で今後起こらないような形で調整をしていただくようにお願いしておきたいと思います。

【長尾委員】  今,濱名委員がおっしゃった議論は,私も大変興味があるものです。一緒に頭の中に入れながらだったのですが,榎本室長がいらしたときに,私も濱名委員も質問した,試験の期間のことに関してですが,これは大学の裁量であり,中に入れることも大学で決めたらいいということでした。そのときには,試験というものをどう考えるかは大学で考えたらいいというお答えをいただいていたと思うので,この議論をまた覆したくないのです。

【荻上委員】  先ほど説明されたように言われると,やはり定期試験期間を設けるのが原則だということになりますので,これはあくまでも,文章に書かれているとおり,何も触れていないのだから,それは各大学の判断でいいということを,是非,この場でというか,どこかで明確にしていただきたいと思います。

【佐々木部会長】  いかがですか。表現の仕方はもう少し検討した上で御提案をいただくとして,そういう御意見であるということはきちんと踏まえていただきたいと思います。

【納谷委員】  部会長がおっしゃられたように表現の問題ですから,御検討いただきたいと思います。期間と書くから何となくひっかかってしまうのです。別に,定期試験なり,試験を行うと書けばいいわけです。ここにある,決められた中身のほかに,試験は別にやってくださいと書けばいいわけです。そうすれば,皆さんが言った試験のやり方等は,今弾力的にやっているとおりにやればいいわけです。ですから,表現を少し考えていただければよろしいかと私も思います。

【荻上委員】  試験は別にやってくださいと書かれるのは,やはり具合が悪いのではないでしょうか。評価の仕方はいろいろあると思いますので,きちんと評価をした上で単位を授与せよということが大事であって,試験というか,いわゆる時間をとって別に試験をするというようなことを決めるべきではないと思いますが。

【池田大学振興課長】  これまでの議論も踏まえて適切な表現を工夫したいと思います。

【田中委員】  4学期制について少し申し上げておきたいことがあります。今,濱名委員が御指摘になっていた,8週間で1単位ということがあり得ないという御指摘なのですが,私はあり得ると思っております。すなわち,セメスターの科目で2単位の科目というのは週に1回の授業です。90分授業ですから2時間分ですが,2時間分,90分授業が,セメスターですと15回ある。これで2単位であります。私どもが考えている4学期制というのは,川嶋委員がおっしゃるとおりで,いわゆるクオーター制ではありません。いわゆるクオーター制とアメリカで言っているのは12か月を4で割っているので。3か月で1クオーターになります。
 そういうことを申し上げているのではなくて,私どもが考えているのは,春学期を前半と後半に分ける。秋学期を前半と後半に分けるということです。なぜそれが必要かというのは,国際化のために必要なのです。というのは,欧米の大学や,9月に入学が始まる,北京なんかもそうですが,そういう欧米の大学ではサマースクールが始まるのは6月ですので,7月の末まで授業をセメスターでやっていると,学生はサマースクールに出られない。せいぜい行けるのは英語学校の集中講義だけです。普通の大学の授業を受けたければ,どうしても6月の頭,7日ぐらいには出してあげなければならないのです。それから,オーストラリアとニュージーランドのオセアニアは,2月に学年度が始まりまして,11月20日ぐらいで学年度が終わります。ですから,11月23日ぐらいからサマースクールが始まるはずです。これも,秋の学期が9月終わりぐらいから始まって11月22日ぐらいで終わりますと,23日からは秋の後期に入ることができるのです。そうすると例えば,現在ですとオーストラリアで授業を1年間留学して帰ってきた学生が,11月20日ぐらいに帰ってまいりますと,4月までぶらぶらしているしかないのです。これが,秋の後期で科目登録ができて授業に出られれば,11月23日から1月末まで,もしくは2月の頭まで授業に出て,そこの間,勉強することができるのです。送り出し後の受け入れに関しても非常にスムーズになります。それから,海外の学生が日本の大学でサマースクールを受けたいときに,今ですと8月に受けるしかないのですが,欧米では6月から7月にサマースクールを受けるのが常識ですので,春の前半と後半を区切る必要があるのです。そのためには,2単位科目のセメスター科目を8週間で1単位提供してあげる必要があると思っています。その柔軟性も必要だと思う。もちろん4単位の科目を,年間を4分の1にして,セメスターを半分にして,4単位で8週間で2単位ということもあり得ますが,2単位科目であるならば,8週間で1単位ということも必要だと思っています。そうしなければ,おそらく国際化はできない。
 それからもう一点申し上げると,東京大学がおっしゃっている,ギャップタームが必要であるという秋入学の考え方も,クオーター制であるならば,ギャップタームというのは学生が主体的に選ぶことができるのです。ですから,震災があったところにボランティアで,この学期は休んで復興のボランティアに行くということも自由に決められますし,どの時期に自分はどこでインターンをやるかというところも,秋の前半だとか秋の後半であるとか春の前半とか春の後半とか,夏休みと合わせてやるとか合わせないとか,いろいろなことが考えられます。そういうことも全て学生が主体的に可能になりまして,ギャップタームの使い方も学生が主体的に設計できますし,国際的にもどこの国に出るか,オセアニアに出るか欧米に出るかも自分で主体的に決められます。教員も,夏と秋の前半を組み合わせて研究に没頭するのか,どこでどのように組むかということによって,大変柔軟に研究期間も設けることができるということで,やはり研究と教育の国際化と柔軟化,またギャップタームの積極的な活用に関しても,こういうことをお認めいただけると,非常に柔軟になると考えております。

【濱名委員】  誤解があるので1分だけ。早稲田大学のお考えはそれで結構かと思います。私は,望ましいかどうかというと,複数,週複数回等々のことと矛盾するような形は望ましいことではないと思うのですが,他省庁や教員養成で出てくるのは,15週の学期制を半分に分けて単位を出すというような形になるのです。つまり,全体の制度と違う形での8週の授業がまかり通っていて,それが専門職養成とリンクされているとするならば,これは高等教育の仕組みとしては整合的でないということで,徹底していただきたいということです。

【佐々木部会長】  資料2の5ページに,設置基準改正の方向性として具体的な方向を丸二つで示してあります。本日は,この点を御承認いただいたということにさせていただきます。成績の評価の問題,試験期間の問題等々については,本日の御意見を反映される形で基準等々の整備を行っていただくということです。具体的な修正の提案は分科会へ提案することになります。これについては私に御一任いただいて,事務局と詰めた上で先へ進めさせていただきたいと思います。大学分科会でもう一度議論する機会がありますので,そのときにまた御意見を補足していただけたらと思います。議題2についてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 要するに,講義の場合,1単位あたり授業15時間確保の原則は崩さない,したがって,試験をするならそれはその時間外で,ということだが,15週または10週にわたって授業をしなければならないという原則をゆるめる,ということ。学年歴の点で苦しいなら,いろいろ工夫してください,ということだ。ただし,講義なら1単位あたり授業(試験は除く)15時間をきちんとやっているかどうかはチェックしますよ,ということだろう。

 この議題は,2013年1月18日の大学分科会(第112回)で審議され,省令改正に関する諮問が了承された。

資料1-1 大学設置基準及び短期大学設置基準の改正について(諮問)
資料1-2 大学設置基準及び短期大学設置基準の一部を改正する省令案について
資料1-3 柔軟なアカデミック・カレンダーの設定について(pdf) ←大学教育部会資料の改訂版(今後参照すべき資料)

 関係議事録抜粋。

【佐々木委員】  2件について御報告をさせていただきます。いずれも先月末12月27日に開催した大学教育部会で審議をいたしました。
 まず,アカデミック・カレンダーの柔軟化,授業期間に関する規定の弾力化については,結論を申しますと,部会としてはこれを是として,弾力化の方向に賛成したいという結論です。詳しいことは後ほど事務局から説明がありますが,御承知のとおり,設置基準第23条は,教育上特別の必要がある場合を除いて,原則として10週又は15週で授業を実施するという規定になっております。現在,本条に基づいて,多くの授業は週1コマ15週にわたる講義として行われているわけです。
 8月末の中教審の答申にお示ししましたように,今後,一方方向の知識伝達型,知識注入型の教育から,様々なアクティブラーニングを取り入れた,学生と教員の双方向的な意思疎通を行う授業が増えてくる可能性があります。あるいは,そういう新しい方法を通して学生の主体的な学びを重視する授業へ転換していくことが求められているわけであります。こうした観点から,授業期間がより弾力的に設定できるようになることによって,授業内容についても様々な工夫を施す余地が出てくるのではないか,より多様な授業の提供が期待されるのではないかと考えまして,設置基準の改正(案)につきまして,部会として審議の上,これを了といたしました。

 (中略)

【池田大学振興課長】  それでは,諮問について読み上げさせていただいた後,補足説明をさせていただきたいと思います。
 資料1-1を御覧ください。
 「次の事項について,理由を添えて諮問します。
          大学設置基準及び短期大学設置基準の改正について
 平成25年1月18日
                            文部科学大臣 下村博文
 (理由)
 大学及び短期大学における各授業科目の期間については,10週又は15週にわたる期間を原則としつつ,教育上特別の必要がある場合には,より短い特定の期間で行うことが認められているが,各大学及び短期大学における創意工夫により授業を編成し,学生の主体的な学びを促進するため,より多様な授業期間の設定を可能とする必要がある。
 このため,別紙のとおり大学設置基準及び短期大学設置基準の改正を行う必要があるので,学校教育法第94条の規定に基づき標記の諮問を行うものである」。
 具体的な改正内容は,次のページに要綱が示されておりますのと,資料1-2に示しておりますが,資料1-3にわかりやすくまとめておりますので,資料1-3に基づいて御説明させていただきます。
 資料1-3につきましては,基本的には11月27日開催の大学分科会にお示しした資料とほぼ同じものです。資料1-3の5ページを御覧いただきたいと思います。「大学設置基準改正の方向性」というページです。先ほど佐々木部会長から御説明がありましたように,一番下の「参考」というところを御覧いただきますと,現在の大学設置基準23条におきましては各授業科目の授業期間について規定しておりますが,ここでは,大学の「各授業科目の授業は,10週又は15週にわたる期間を単位として行う」という原則を示しつつ,ただし書で,「教育上特別の必要があると認められる場合は,これらの期間より短い特定の期間において授業を行うことができる」と,こういう規定になっております。
 しかしながら,この10週又は15週という原則に囚われて,従来,週1コマ15週というのがともすると画一的に捉えられていた嫌いがありますので,昨年8月に出していただいた答申などを踏まえて,今後,授業の在り方の多様化を推進するため,より弾力的な授業期間の設定を可能にする必要があるということです。
 改正の趣旨の上の方の二つ目の丸を御覧いただきたいと思います。今,申し上げたように,中教審答申の内容等も踏まえまして,一方向の知識伝達型の授業から,教員,学生が双方向に意思疎通を行うことができるような,学生の主体的な学びを重視する授業への転換が必要ということです。
 なお,注意していただきたいことは,この改正というのは授業期間の弾力化です。授業時間自体は1単位当たり15時間という,平成20年の中教審の答申で示していただいた単位についての考え方,これは維持いたしますが,授業の期間を弾力化するということです。
 具体的な改正の方向性といたしましては,「具体的な方向性」というところに2行書いております。先ほど御説明したような,教育上特別な必要があると認められる場合というところを,「教育上必要」かつ「十分な教育効果」が認められる場合に弾力的な運用を認めるということと,もう一つは,今まではより短い期間しか明示的に示していなかったものを長い期間も含めて明示的に容認するという改正を行いたいと考えております。
 もう1枚めくっていただきますと,これによりまして,では,具体的にどういう事例が可能になるかと申しますと,真ん中のブルーの部分を御覧いただきたいと思います。例えば8週間で1週当たり2コマ,週1時間の講義を週2回実施するというようなことも可能になります。一部の大学で構想されているような4学期制もこれで可能になると思います。
 それから,1コマ当たりの授業時間,これを少し延ばすことによって,全体の15週を短縮するということも可能になると思います。この場合でも合計の授業時数は維持していただくことになりますが,授業の期間というのは15週よりも短くすることもできるかと思います。
 三つ目の例としては,様々な授業形態を組み合わせるということも可能になるかと考えております。例えば13週間で講義を週1回行いながら,特定の日にフィールドワークを行うといったような組み合わせとか,あるいはサービス・ラーニングと講義を組み合わせていただいて,授業期間としては例えば11週ぐらいで行うと,こういったことも可能になると考えております。
 もう一つ,資料の7ページを御覧いただきたいと思います。とはいいながら,アカデミック・カレンダーだけでは,1単位当たりに必要な授業時数が適切に行われているかどうかというのをなかなか外形的に確認できない場合もある,質保証の面で懸念も生じる可能性があるということから,この省令改正を行う際には,各大学等に対して以下の趣旨を徹底したいと考えております。
 具体的には,繰り返しになりますが,授業期間の原則は10週又は15週であるということと,1単位当たりの学修に対する考え方を変えるものではありませんので,講義の場合は15時間以上確保する,これはお願いしたいと考えております。それから,授業期間の弾力化が認められる場合は,教育上合理的な必要性があり,かつ,原則どおりの授業を行った場合と同等以上の教育効果が確保されているという,こういった趣旨を通知で明確に各大学にお伝えするとともに,認証評価機関にも伝えたいと考えております

 (中略)

【安西分科会長】  それでは,設置基準の改正ですので,議決のプロセスに入らせていただきますが,よろしいでしょうか。先ほどの単位認定の件につきましては,大学教育の質の確保ということは,御意見もありましたが,大事なことですので,文部科学省におかれましては,きちんとお願いできればと思います。
 それでは,中教審の運営規則第3条第2項の規定によりまして,大学設置基準と短期大学設置基準の改正に関わる事項につきましては,大学分科会の議決をもって審議会の議決とするということになっております。
 それでは,ここで大学設置基準及び短期大学設置基準の改正(案)について議決を行いたいと思います。よろしいでしょうか。
 それではまず,定足数を満たしているかどうか確認させていただきます。

【田中高等教育政策室長】  大学分科会の委員及び臨時委員の数は28人であり,現在21人出席いただいておりますので,中央教育審議会令に基づく過半数を満たしております。
【安西分科会長】  それでは,定足数は満たしているということですので,先ほどの文部科学省から説明のありました改正(案)の内容について,御了解をいただいたということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【安西分科会長】  それでは,今回の諮問につきましては,これを適当と認めまして,文部科学大臣に対して答申をさせていただくということにいたします。
 また,こちらの設置基準の改正につきましても,趣旨が関係者に十分伝わりますように,これも文部科学省においてよろしくお願いいたします。

 15回確保問題は,(1単位当たり)15時間確保問題として続いていくことになる。

【天気】晴れ。11時から学生アドバイザーとして,担当する新入生9名と懇談会。まずは顔と名前を覚えることから。