食品の放射能測定実験(1)

 ガイガーカウンターでは食品の放射能測定はできないと言われている。しかし,ガイガーカウンターで食品の放射能を測定することは全く無意味なのだろうか。素人が安価なガイガーカウンターで空間線量を測ることに対しても否定的な意見があるが,測定値を目安として利用することは多くの人が認めているだろう。そうであるならば,食品の放射能をガイガーカウンターで測定した値も,目安として利用することは可能ではないのか。これは試してみる価値があると思った。

 そう考えるに至った一つのきっかけは,シンチレーション式の測定器としては比較的安価なHoribaのRadiを利用した放射能判定キットが発売されるというニュースを聞いたことだ。それなら,Radiとほぼ同じ性能のMr. Gammaでもできるかもしれない。そう考えていたところへ,BG遮蔽パイプセットというバックグラウンド放射線をある程度遮蔽できる鉄製容器の発売を知った。厚さ2cmの鉄で50%以上の遮蔽ができるというので試してみたいと思った。通常,γ線の遮蔽には鉛のブロックなどを使うのだが,これはとても素人が手を出せるようなものではない(重さの点でも,値段の点でも)。2cmの鉄では意味がないと専門家なら思うだろうが,遮蔽しないよりはましだろう。

 ということで,BG遮蔽パイプセットを注文し,本日それが届いた。総重量38kgということだが,4つのパーツを組み合わせることで比較的移動は楽だ。宅配便でも3つの荷物として届いた。私は,ホームセンターでキャスター付きの台を買ってきてそれに載せている。掃除のときなど,少し移動したいときに便利だ。コストを下げるためということで,塗装ははげやすいということだったが,確かにそうだ。ふたの開け閉めをかなり行ったが,そのためふたと本体のすれる部分の塗装がかなりはげた。色は,販売サイトの絵ではグレーだったが,クリーム色だった。部屋の中においても違和感がなく,とてもよい感じだ。

 さて,早速測定実験を行った。まずは,試料を入れず,測定器Mr. Gammaのみを入れて測定した。1分毎に10回測定した平均値は,0.018μSv/hだった。ちなみに,鉄での遮蔽なしでは,0.036μSv/hだったので,ちょうど50%の遮蔽率だ。次に,現在食べている米(古米)1合(162g)をタッパーに入れて,鉄容器の底に置き,その上にMr. Gammaを置いて,先ほどと同様の測定を行ったら,0.018μSv/hだった。したがって,この米からはγ線はほとんど出ていないということが分かった。古米なのでセシウムは入っておらず,当然の結果だ。しかし,当然の結果が出てくれないと今後の測定結果の信頼性が崩れるので,これはこれで重要な結果だ。

 ではβ線はどうか。RADEX RD1503はβ線にも反応するので,今度はこちらで測定した。まず,160秒毎に7回測定した平均値は,0.07μSv/hだった。次に,先ほどの米の上に測定器を置いて,同様の仕方で測定したら,0.10μSv/hだった。0.03μSv/h増えたことになる。γ線はほとんど出ていないので,β線の影響だろう。そこで,今度は米と測定器の間にBG遮蔽パイプセットに付いていた厚めのアクリル板(押さえ板)を入れて測ってみた。これでβ線が遮蔽できるので,もし先ほどの増分がβ線によるものなら,今度はその増分がなくなるはずだ。実際測ってみたところ,0.07μSv/hとなり,予想は当たった。このβ線は米に含まれているカリウム40によるものだろうか。もしそうだとすると,セシウムを測る場合は,β線を遮蔽した方がよい。このアクリル板の押さえ板はそのような意味があったのだろうか。【9/25追記:米を再測定してみた。その結果,アクリル板でβ線を遮蔽しなくても,放射線は検出されず(BG:0.07μSv/h, 測定値:0.07μSv/h),カリウム40によるβ線の検出というのは間違いだった可能性が高い。】

 最後に,上記の測定では1分毎,あるいは160秒毎にふたを開けて測定器の数値を読まねばならず,手間と時間がかかるとともに,塗装もはげるので,何とかふたの開け閉めをせずに済む方法はないかと考えた。そこで思いついたのが,iPhoneの録画機能だ。iPhone 4には,ライトが付いているため,ふたを閉めた状態でも測定器の表示を録画することができる。そこで,iPhoneにゴリラモバイル(三脚)を付けて鉄容器の中のアクリルケースに固定し,Mr. Gammaによる米の測定を再度試みた。ビデオを再生し,早送りしながら1分毎の値を読んでいった。ふたの開け閉めを繰り返さないでよいのは確かに楽だ。結果は,同じ0.018μSv/hだった。

 今度は,セシウムの放射能を含んでいそうな試料で試してみたい。

【天気】晴れ。