リスクの捉え方

 原発事故による放射線被曝について,心配だと考えている人と,それほど心配する必要はないと考えている人と,両方いるようだ。それほど心配する必要がないと考えている人は,リスクを確率で捉えている人に多いように思う。放射線以外にもリスクは多数存在する。放射線被曝によるリスクの上昇は大したことがない。だから,それほど心配する必要はない,ということだろう。心配する人は,確率よりも,万が一,自分や家族に何らかの影響が出たらということを心配する。リスクを確率ではなく,万が一とはいえ自分に降りかかる可能性のある悲劇として捉えている。いくら確率が低くても,それ以外のリスクがあっても,放射線被曝によるガン発生やその他の健康を何とかして避けたいと考えている。

 どちらの考え方が正しいということはないと思う。ほとんど起こるはずがないと言っていた原発事故が起こったのだ。確率によるリスクの捉え方に対する不信が起こってもなんら不思議はない。私は,これまで自動車の運転免許を取ろうと考えたことは一度もないし,もちろん免許はずっと持っていない。それはなぜかといえば,自分が運転する車による事故で他人を死傷させることを避けたかったからだ。確かに,その確率は低いかも知れない。しかし,万が一そのようなことがあったら,と考えるととても自動車運転のリスクを引き受けることはできない。そのように,人には受け入れがたいリスクというものがそれぞれの価値観に基づいてあるはずだ。特に,取り返しの付かない結果を予想した場合に,リスク回避への思いが強くなると思う。わが子は絶対に小児癌患者にしたくないと思う親は,いくら小さなリスクとはいえ,それを避けるための最大の努力をすることは十分に理解できることだ。確率は問題ではない。受け入れるという選択肢は最初からないのだから。

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