風評被害

 生産者は「風評被害」という言葉を使わない方がよいと思う。その代わりとなる言葉を強いて考えるとすれば,「消費者によるリスク回避行動によってもたらされたと推測される経済的損失」くらいが妥当か。消費者を加害者と見なす「風評被害」という言葉は,結局生産者と消費者の無用な敵対を招いてしまう。生産者も消費者も,原子力災害においては被害者だ。その損害は加害者である災害を引き起こした者が補償すべきものである。もし,汚染された生産物によって健康被害が生じたら,今度は生産者が加害者となってしまう。

 放射能汚染が基準値以下だからといって健康に全く害がないわけではない。その汚染度に応じたリスクは必ず残る。どの程度のリスクが受け入れ可能かは,人によって,状況によって判断が異なる。他の人より多くのリスクを引き受けない人を,風評被害を招く人というように決めつけてはいけない。

 先にも書いたが(本ブログ3月18日「アメリカの予防的措置」),生産者の損害を最も少なくする方法は,生産物のリスクをきちんと明示することだ。そうすれば,それを受け入れることの出来る人が買うだろう。リスクが分からなければ,人は余裕を持たせるため,リスクを多めに見積り,本来受け入れ可能なリスクまで拒絶してしまう。リスクの分からないものを避けるのは,消費者の当然の権利だ。それに後ろめたさを感じることはない。

※6/2一部加筆修正。