首都圏「ホットスポット」説

 以前,金町浄水場の水の放射能が高いということでニュースになった。また,最近では関東地方の農産物の放射能が高いということで話題になっている(新茶など)。関東にも放射性物質が来ていることは確かなようだが,その詳しい実態は明らかにされないままである。

 本来,放射能測定のようなものは,公的な機関がきちんとモニタリングして,公表すべきである。特に,子どもの健康に重大な影響を与えるものである以上,各小学校区単位で測定すべきものだと思う。しかし,市町村レベルの自治体で自ら測定しているところは多くない。

 そうした中で,個人が私的に測定した結果がインターネットで公表されている。私も,地震直後から,そうした測定結果をずっと注意してきた。その過程で,3月15日の異常な数値に何とも言えない不気味さを感じた。その際,日本政府からは特に屋内待避の指示は出されなかったが,例えば在日米軍はそうした措置を執っていた(本ブログ3月15日「最悪の事態」)。

 最近,ある個人が「葛飾区〜流山〜柏〜守谷」の当たりの放射線量が周囲よりも高いという測定結果をまとめた(ウェブサイト:RadioisotopeWeb)。これは首都圏「ホットスポット」説と呼ばれているようだ。この説には,多くの人々が関心を持つはずなので,公的な機関による検証が必要だろう。千葉県の関係自治体も,そうした説による市民の不安を消そうと,これまでどおりの説明(「健康に問題ない」など)を繰り返してはいるが,それでは市民が納得しないと考えてか,県に放射線量測定・公表の要望書を出している。また,松戸市では,準備が整い次第,市独自の測定を行う予定だという。

 問題の柏には,東大のキャンパスがある。日本を代表する研究機関として,東大はこうした説に対してはきちんとした対応をする社会的責任があると思う。なお,東大の見解は「健康にはなんら問題はない」というもの(「環境放射線情報に関するQ&A」)。

 いま必要なリスク・コミュニケーションは,「安全です」「健康には問題ありません」といった言葉ではない。これはみな,テレビで聞き飽きている。実際どの程度のリスクがあり,どのような理由でそれは受け入れ可能あるい不可能と判断されているのかという説明である。それを聞いた上で,安全かどうか(受け入れ可能なリスクかどうか)の結論は,市民自らが出すようにすべきだ。小さな子どもがいる家庭と老夫婦の家庭では全く異なる結論を出すこともありうる。

 RadioisotopeWebによると,私が通勤で使っている駅の昨日の線量は0.2μSv/hだった。そこの自然放射線量率はだいたい0.03μSv/hくらいなので,6倍くらいになっている。このたび増えた線量率が1年続くと考えると,年間約1.5mSvとなる。これは,公衆の許容線量(ICRP基準)1mSvの1.5倍である。さらに,ECRR基準の0.1mSvの15倍だ。十分警戒してよい状況だと私は思うのだが…。「ホットスポット」から外れたところでもこうなのだ。

追記:自然放射線量率は,日本地質学会ウェブサイトに掲載されている「日本の自然放射線量」で分かるほか,1992年8月に柏市の小学生が「はかるくん」で測定した柏・我孫子・中央線の測定値が公開されている。

【天気】晴れのち曇り。蒸し暑い。