2/2に剽窃に関するシンポジウムに参加してから,もらった資料を読み返し,聞いた話を思い返しながら,剽窃問題について考えている。
インターネットの発達により,学生が簡単にネットからコピペしてレポートを作れるようになった。これまでのようにレポート課題を出すと,ぞろぞろとコピペ・レポートが出てくることになる。こちらも,ネットで検索するとある程度はソースを発見することができ,非常に不愉快になりながら減点をすることになる。その不愉快さと時間・労力はばかにならない。こうして剽窃が問題化されてきた。
まず,コピペ・レポートを発見する手間が問題だ。時間と労力をかければそれなりにできるが,こうした「後ろ向きな作業」はできるだけ省力化したい。そこで,コピペルナーの誕生となった。外国では,Turnitinなど同様なサービスがかなり前から存在するという。
さて,これからはレポートをコピペルナーにかけて剽窃を発見し,減点したり,処分したりしていけば,剽窃はなくなっていくのだろうか。外国の経験からすると,それは無理のようだ。最近は,剽窃を防ぐ効果は,罰則よりも教育のほうが強いという議論もある。先のシンポでは,これからは日本でも外国のように剽窃について厳しく対応していこう,という雰囲気が強かったが,それだけでは失敗が約束されていると考えるべきだろう。もちろん,シンポでは処罰と並んで教育の重要性が繰り返し強調されていたが。
さて,ではどう教育すべきか。価値と技術の両方を教えなければならない。まず,大学(広く学問の世界)では,何を大事にしているのかということを知ってもらい,その価値観を共有してもらわなければならない。そしてまた,その価値を実現するための技術(具体的には,引用・言い換え・典拠表示)を身につけてもらわなければならない。
大学全体で取り組むべきこともあるし,個々の教員が授業で取り組むべきこともあるだろう。
大学全体としては,学生が守るべき倫理規定の中に剽窃の禁止を明記する,剽窃に対する処罰規定を定める,すべての新入生に剽窃を避けるための教育を施す,などがある。
私としては,シラバスで剽窃に対する私のポリシーを明示するとともに,レポート課題を出すときには,レポートが満たすべき要件をできるだけ詳しく示していきたい。また,剽窃とは何か,それを避けるにはどうすればよいかを理解するための自習用教材を用意することも考えたい。その上で,コピペルナーを活用し,剽窃には厳しく対応していきたい。
参考:
- Scott Jaschik, “Plagiarism Prevention Without Fear,” January 26, 2010, Inside Higher Ed, http://www.insidehighered.com/news/2010/01/26/plagiarize
- Thomas S Dee and Brian A. Jacob, “Rational Ignorance in Education: A Field Experiment in Student Plagiarism,” Working Paper 15672, National Bureau of Economic Research, January 2010, http://www.swarthmore.edu/Documents/academics/economics/Dee/w15672.pdf
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