- ハイビジョン特集 フロンティア「ヒロシマナガサキ ~白い光 黒い雨 あの夏の記憶~」2008.7.31, NHKBShi, 90分
被爆者へのインタビューを中心に,そして被爆直後の映像と被爆者が書いた絵を用いながら,被害の状況を正面から描いている。ある程度の年齢の日本人にとっては,毎年様々な形で触れてきたものだが,アメリカ人や日本の若い人たちにとっては初めて知ることも多いだろう。上記の番組では,高校の授業で生徒にこのビデオを見せてディスカッションしている場面が紹介されていたが,とても良いことだと思う。
この映画の中で,被爆直後から日米の科学者によって原爆の被害(効果)が調べられていたが,治療はされなかったこと,つまり被爆者がモルモットにされていたことが触れられていたが,このことは日本でもあまり知られていないことだ。それと日本人科学者も戦時中に原爆研究をしていたこと(これは映画の中では触れられていなかった)。こうしたことについても人々を知らされるべきである。
この作品を制作したHBOのサイトには,多くの有用な情報が掲載されている。また,DVDも販売されている。
バンフテレビ祭グランプリ・NHK賞 受賞
アカデミー受賞経験のある日系アメリカ人のドキュメンタリー映像作家、スティーブン・オカザキ氏が、広島・長崎の被爆者と向き合った。今まで、アメリカの放送局が制作した“原爆もの”は、ほとんどが「アメリカは正しかった」という考えにもとづいて作られてきた。しかし、オカザキ氏は、新たに徹底的に被爆者へインタビューを行い、先入観に捉われず、被爆の実態を丹念に取材している。日米の考え方の違いを超えた作品「ヒロシマナガサキ」は、広島・長崎の平和への願いを世界へと訴えるものである。なお、この番組は、カナダで開かれたバンフテレビ祭(2008)でグランプリとNHK賞を受賞した。
番組データ
・原題:White Light, Black Rain: The Destruction of Hiroshima and Nagasaki
・制作年:2007年
・制作会社:Farallon Films(アメリカ)
●Sオカザキ 20年間におよぶ広島・長崎への挑戦
日系3世のオカザキ氏は、日米双方の気持ちが分かる数少ないドキュメンタリー作家。オカザキ氏にとって被爆者の問題は20年以上考えてきたテーマ。広島・長崎に通い、2006年34分の短編ドキュメンタリーを自主制作し、アカデミー賞にノミネートされた。今回の番組は、こうした取材の集大成として、アメリカの歴史に残る“原爆もの”を目指した。
●日本人の若者たちへ ~被爆体験に風化の中で~
オカザキ氏が、今、“原爆もの”を制作しようと考えた最大の理由は、日本で被爆体験の風化が急速に進んでいるからだ。渋谷で50人に行った街頭インタビューで、8月6日に何があったか答えられたのは2人だけだった。アメリカ人の視聴者だけでなく、何も知らない日本の若者に見てもらえる作品を目指した。「このままでは、広島・長崎の経験は世界中で風化する。今が最後のチャンスだ」と彼は話す。
●アメリカ人はどう受け止めたのか?
オカザキ氏は、テレビ放映や映画館での上映だけでなく、アメリカの教育機関など様々な場所で上映会を行ってきた。そうした活動中で大きな反響が届いているという。番組では、オカザキ氏へのインタビューを行う共に、HBOのプロデューサーの思い、アメリカ人の反応を独自に取材する。