ドクター・アトミック ~科学者オッペンハイマーの実像~

  • ハイビジョン特集 フロンティア「ドクター・アトミック ~科学者オッペンハイマーの実像~」2008.8.7, NHKBShi, 95分

 番組を見た。科学者を主人公にした演劇というものは少なくないが,オペラでというのは初めて知った。科学技術コミュニケーションの一種としてみることもできる。「サイエンス・オペラ」とでも言おうか。オペラのストーリーを決める際に,ディレクターが様々な文献のコピーを文字通り「切り貼り」しているのが興味深かった。

 この番組に関係のあるウェブサイトは以下の通り。

 2005年、サンフランシスコの劇場で、ある新作オペラが上演された。題名は「ドクター・アトミック」(原爆博士)。主人公は、科学者ロバート・オッペンハイマー。原爆を開発したマンハッタン計画の中心人物だ。これは1945年7月16日にアメリカが行った人類初の原爆実験と、その開発の舞台裏を描いた異色のオペラである。

 「芸術はどのようにして、テロや核拡散という、現代の社会問題に応えることができるのか?」オペラの作者やスタッフはそう問いかける。

 この番組は、オペラの制作過程に密着しながら、貴重な資料映像や物理学者の証言を織り交ぜて、アメリカが核開発で背負う原罪と、科学者の倫理的責任を問いかけるアート・ドキュメンタリーである。

 

番組データ
・原題:WONDERS ARE MANY: The Making of Doctor Atomic
・制作年:2007年
・制作会社:Jon Else and Actual Films/WGBH(アメリカ)

 

●オペラ 「ドクター・アトミック」
 2幕からなる新作オペラ。第1幕は、実験の1か月前のロスアラモス核実験場。科学者たちと軍関係者らが、人類の未知の実験をめぐって、それぞれの立場から「自己の正当性」を主張し合う。第2幕は、実験を直後に控えた1945年7月15日の朝。実験が人類に何をもたらすのか、不安と重圧に苦しめられるオッペンハイマーと、妻キティの会話を中心に、科学者が負う倫理的責任について問いかける。(作者 ピーター・セラーズ  作曲 ジョン・アダムズ)

 

●科学者ロバート・オッペンハイマー
 原爆の開発を主導したユダヤ系アメリカ人物理学者。ナチスドイツに対抗するため、自ら原爆開発プロジェクトに参加した。しかし、広島、長崎の惨状を聞いた後、水爆の開発に反対を唱え、アメリカ人から裏切り者のらく印を押される。オペラでは主人公として、核実験前の科学者の心理を語る。ドキュメンタリーでは、本人の生前のインタビュー映像を使い、その思想と心情に迫る。またオッペンハイマーの言動の意味について、世界的な理論物理学者で、核批判を展開するフリーマン・ダイソンが、解説・証言する。

 

出典:http://www.nhk.or.jp/frontier/schedule/20080807.html

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 北大Sさんのブログ「独り言つ」にも,この番組およびオペラの話題が書かれている。