’15年度前期 授業の反省

今学期授業の第13回がすべてのクラスで終了したところで,授業の反省をする。

読書会

今学期,初めて読書会形式の授業を実施した。「科学技術と現代社会」の授業(昼間部,夜間部1クラスずつ)で試みた。具体的には,高木仁三郎『市民科学者として生きる』(岩波新書)を毎週1章ずつ,半期かけて読んでいくというものだ。学生がどれだけ読めるのか見当が付かなかったため,毎週読むべきページ数は無理ない分量とした。読書会は,1班4名程度で行い,進行は学生に任せた。また,毎回班のメンバーは替わるようにした。果たしてこの方式で読書会が成り立つか,最初は不安だったが,読書会は最初から私の予想以上にうまくいった。読書会の授業というものが十分成り立つことは,今回の試みで証明された。
ただ,進行を完全に学生に任せたため,議論の方向が私の期待した方向に行くことはまれであった。また,背景知識の不足から,議論が十分深まらないことも多かった。私の講義と読書会をうまく組み合わせることで,こうした問題は解消されていくのではないか。講義と読書会を交互に行えばよいのか,学期の前半に講義を行い,後半で読書会を行えばよいのか,今後検討していきたい。

授業SNS

「科学の社会史」では,今学期も授業SNSを利用した。これで5年目となる。先学期から変更した点は以下の通り。

  1. 1週間で獲得できるポイントに上限を設けるのは先学期と同様だが,先学期はツイートの上限を10pt,コメントの上限を5ptとした。今学期は,授業中の上限を10pt,授業外の上限を5ptとした。授業外の書き込みを促そうと思ったからである。結果は,5つ続けて投稿する者が多く,授業外にコメントを付け合うということは実現しなかった。次回は,また先学期と同様に,ツイートとコメントで分けることにしたい。
  2. 中間・期末レポートの提出は行わず,毎回200字以上の課題を提出するだけにした。
  3. 中間・期末レポートで質的評価をする代わりに,授業SNSへの書き込み全体,および課題の全体を,それぞれ質的に評価する方式とした。割合は,量的評価が60%,質的評価が40%である。この割合が妥当かどうかは,最終的な成績を付け終わった段階で評価したい。
  4. 課題の提出期限を授業日の2日後とした(日曜が挟まる場合は,1日追加)。これは,これまでで最も期間が短い設定である。果たして,十分な提出があるかどうか不安もあったが,多くの学生は期日までに提出できた。期間が短すぎるという苦情もあったが,締切を遅くしても結局締切間際にならないとやらない学生は多く,締切が早い方が記憶が新しい分,取り組みやすいというメリットもあるだろう。課題はそれほど難しいものではないため,多くの学生にとっては,実行可能だと思われる。

成績評価の方法について,昨年度はかなり大きな不満が発生したが,今学期は特にその点での問題は起こらなかった。来学期も,基本的にはこの方式を続けたいと思う。

授業ビデオ

今学期は,「科学の社会史」の授業ビデオ提供は行わなかった。しかし,講義内容は昨年度とほとんど同じなので,昨年度の授業ビデオを参照するように促した。一部の学生は,利用していたようである。これにより,授業後の作業がかなり軽減された。

本の紹介

講義の授業では,これまで授業サイトの参考文献欄に参考文献の書誌情報を掲載していたが,それだけでは学生がそれらの書物を手にすることはほとんどないので,授業の最後にその本の実物を書画カメラで提示しながら,紹介することにした。何冊も教室まで持っていくのは重くて大変だったが,その効果はあった。オンラインアンケートで,そうして紹介した本を一部でも読んだかどうか尋ねたところ,受講者に読まれた本はかなりの数に上った。実物の力の大きさを思い知った。さらにブックトークの形できちんと本を紹介すれば,もっと読む人は増えるであろう。

グローバル化対応

今学期は,特にグローバル化対応ということは考えなかったのだが,現在検討が進められている新カリキュラムでは,グローバル化ということが一つの重点目標となっている。そこで,私が担当している科目でどのような可能性があるか検討するために,期末のオンラインアンケートで,そのことについて受講者に尋ねてみた。そうすると,英語の映画(日本語または英語の字幕付き)を見せたり,英語の資料を使ったりすることを求める学生が一定程度いることが分かった。それなりのサポートが必要だろうが,試してみる価値はあると考える。来学期から試してみたい。

所見票

今学期から,授業アンケートの結果に対して,各教員が所見票を書くことが義務となった。私は,アンケートを実施した全ての科目について所見票を書いたが,その内の一つをここに掲載する。科学の社会史(水3)所見票

終わりに

以上,今学期はいくつかの新しい試みを始め,それなりの成果を得た。来学期はさらにそれらを発展させていきたい。

【天気】晴れ。梅雨明け前だが猛暑。