’14年度前期 授業の反省

 今学期は,授業終了からかなり経ってしまい,記憶が薄まりつつあるが,授業の反省をする。

授業SNS

 先学期に構築したBuddyPressを使った授業SNSを今学期も利用した。先学期から改良した点は以下の通り。

  1. 授業ツイートとコメントの数を成績に反映させる際に,クラスの中央値を一つの目安として採点することにし,その中央値を各自の投稿数と共に表示した。
  2. 授業外での討論が活発化することを期待して,「談話室」というコーナーを設けた。@dを付けて投稿するとそこに表示される。
  3. Teacher’s Blogを廃止した。
  4. 授業ツイートとコメントの個数のカウントを,途中から20字以下のものは0.5個分とカウントするようにした。
  5. 課題コメント機能を当初は実装しなかったが,途中で実装した。

 先学期,各受講者が自分の投稿数とそれによる得点をかなり正確に予想できるようにしたために,上限に達した者が努力を怠るような傾向が見られたため,今学期は,投稿数と成績の関係をあらかじめ明示せず,クラスの中央値あたりだとB評価となるという目安のみ提示することにした。しかし,それは一部のクラスで投稿数をめぐる競争心を高め,これまでにない投稿数を記録することになった。その傾向は,人数の多いクラスほど強くなり,受講者が100名を超えた水3クラスで最高潮に達した。同じ科目でありながら,金1クラスと投稿数の中央値が大きく異なることになり,クラス毎の成績評価基準を採用することに対して不満が発生した。多少の調整はしたものの,原則としてはクラス毎の基準を採用する方針は変えなかったが,今学期のようなことが起こるのはやはり問題だと思われる。成績評価方法の抜本的な変更が必要とされているように思う。

 「談話室」は結局活用されなかった。当初は,教員によるファシリテーションを考えていたが,投稿の長さによるカウントの重み付けに関する議論以外では,教員からのファシリテーションができず,結局活用されずに終わった。学生からの話題提供はほとんどなかった。

 クラスを超えたところでの,教員から受講者へのメッセージを送る場として,先学期はTeacher’s Blogを共通サイトトップに設けたが,今学期は設けなかった。なかなか定期的に記事を書くのが難しかったためである。しかし,共通サイトでのアナウンスは適宜行った。

 授業ツイートとコメントの投稿数を成績評価に反映させることについては,授業の初めの頃に,単なる数だけでの評価に対して疑問が出され,特に「内容があまりない」書き込みに対する評価をめぐって受講者の間でも意見が分かれたので,議論の末にアンケートをとり,結局20字以下に投稿は0.5個分とカウントすることで決着させた。学期末に,そのことに対する受講者の意見を聞いたが,全体的に見るとそれで良かった,ないし悪くはなかったという意見が多数だが,一部反対意見もあった。文字数を気にするというのは,気軽に書き込めることがメリットである授業SNSにとって良くないことなので,何か別の方法を考えた方が良いように思う。例えば,講義のメモを書くところと,感想や意見を書くところを分けるとか(グループ機能を利用すれば可能),成績評価に対する投稿数の影響を少なくするとか。

 課題コメント機能は,先学期の経験から廃止したものだが,受講者からのリクエストがあったので,復活させた。しかし,やはり成績に反映させない場合は全く活用されなかった。談話室と同様に,ネット上で議論させるには,それなりの仕掛けが必要のようだ。

 なお,先学期は課題の締切を二段階にし,早期提出者にはボーナス点を与えることで,モチベーションを高めていたが,今学期は,第一次締切後の公開作業を手動で行うのが大変なので,締切を一本化し,自動的に公開されるようにした。しかしこれは,早く提出する動機付けを低め,締切ぎりぎりに提出する受講者を増やした。その結果,教員点が一部の受講者に集中することになり,そこからまた不満が出ることになった。締切を一つとするならば,締切を1日程度早め,より多くの受講者の課題から選択することが必要なようだ。

 来学期に向けての授業SNSの改善点は以下の通り(予定)。

  • 授業に関する感想や質問などを書き込む「談話室」と,講義のメモを書き込む「共同受講ノート」の二つのグループを設定し,どちらかに書き込むようにさせる。タイムラインは,両方混ぜた形でも,それぞれ分けた形でも表示できるようにする。これで,何を書くべきかについての意見が異なる受講者がうまく共存できるのではないだろうか。
    → 結局,2014年度後期は,グループ機能を用いて投稿場所を分けることはせず,@mで共同受講メモのコーナーに表示させることにした。
  • 投稿数を成績評価に反映させる方法については,毎回上限を設け,それ以上は得点に反映させないということで,競争が過熱することを避ける。そして,毎回地道に投稿をしなければならないので,上限に達したらそれ以降努力を怠るということも防ぐことができる。ただ,これだと高得点の者がかなりの割合で出てくるはずなので,投稿数以外の評価法を組み合わせる必要がある。レポートを課すことも一案である。
  • 過去ログ検索機能を充実させ,「談話室」「共同受講ノート」の別,ニックネームでの検索なども実現したい。

小テスト

 授業サイトに掲載した資料を読むことへのインセンティブを与えるため,資料を読んだ後での小テストをオンラインで受けさせることを考えていたが,今学期は実現できなかった。来学期も実現したいとは思っているが,なかなか難しそうだ。

授業ビデオ

 今学期も,フレッシュマンセミナーを除き,授業ビデオを提供した。今学期は,クラスに依存しない共通の講義部分のみをビデオ化した。そのため,ビデオ掲載の手間はかなり少なくなったように思う。また,講義をいくつかの部分に分けてビデオ化し,それをYouTubeの再生リストでまとめた。そのため,飛ばしながら視聴することが可能となった。

授業内容

 今学期も,基本的にこれまで通りの内容で,大きな変更はなかった。しかし,新たな試みとして,科学技術と現代社会の昼間部クラスでは,第13回にグループディスカッションを取り入れた。思ったよりもうまく進めることができ,受講者にこれまでより豊かな学習経験を提供できたのではないかと思う。

評価方法

 既に述べたように,授業SNSへの投稿数を基本とする評価方法は限界に達しつつあると思われるので,今学期は科学技術と現代社会の昼間部クラスで,期末レポートを課し,それをルーブリックを用いて評価した。それとSNSへの投稿数による評価を組み合わせて評価を行ってみた。期末レポートの出来が予想以上に良くなかったが,これは中間レポートを導入することでかなり改善されるだろう。レポートの採点作業が大変なので,受講者同士によるピア評価も導入してみたいと思っている。

終わりに

 授業SNSを取り入れた授業を3年続け,かなり慣れ,うまく運営できるようになってきたと思っていたが,まだまだ発展途上だということを思い知らされた学期となった。来学期もまた新たなチャレンジを行っていきたい。

【天気】晴れ。