’14年度後期 授業の反省

私が担当するクラスの今学期の授業がちょうど終了したところで,授業の反省をする。

授業SNS

今学期も,BuddyPressを使った授業SNSを利用した。先学期から改良した点は以下の通り。

  1. ポイント表示のページに,各回の授業ツイートとコメントのポイント(書き込み1つで1pt)を表示したが,各回ツイートは10ptを上限に,またコメントは5ptを上限とするようにした。これは,先学期に問題化した書き込み数をめぐっての熾烈な競争が発生することを防ぐための措置。そして,学期全体での合計数によって成績に反映させた。上限を設けることで,高得点者ばかりになることを心配していたが,今回設定した基準だと適当に点数がばらけてちょうど良かった。
  2. @mを付けた共同受講メモを別に表示する機能を設けた。この機能は一部の受講者によって活用されたが,全体としてはあまり活用されなかった。
  3. 当初,@dを用いた談話室機能を付けることはしなかったが,あるクラスで議論ができそうだったので,そのクラスだけ談話室機能を付けてみた。しかし,結局全く利用されなかった。2学期続けて,談話室は活用されないことが証明された。
  4. 中間・期末レポートの提出を,ワードファイルを授業サイトにアップロードする形で行わせた。UNIPAの課題管理機能が不安定だと聞いていたので設けた機能である。
  5. 中間・期末レポートの各自の成績をポイントのページに表示させることでフィードバックした。
  6. 課題の提出期限を次週の授業日の前日とした(先学期より1日早めた)。これは,全ての提出課題を読んで,授業で紹介するものを選ぶための措置。先学期は,締切前に選んでいたため,締切ぎりぎりに提出したものが紹介される可能性はなく,教員点が与えられる人が偏ってしまった。今学期は,先学期よりはより広い範囲の受講者が選ばれたと思うが,受講者の能力(理解力や文章力など)に差がある以上,偏ることは避けられなかった。しかし,それによりクラスの半分以上が教員点0となることもあり,この評価方法への受講者の不満は大きかった。見直しが必要。

授業SNSへの書き込み数を成績に反映させることは,書き込みへのインセンティブとはなるが,弊害も大きいような気がしてきた。じっくり考えることを促すような使い方が望ましい。来学期からは授業SNSへの書き込み数(授業ツイート数とコメント数)を成績に反映させるのは辞めようと思う。

今考えているのは,授業サイトに掲載した資料にコメントを付けさせるシステムだ。一種のソーシャルリーディングが実現できるのではないかと思う。学生がどれだけ書き込みをしてくれるかは未知数だが,試してみる価値はあると思っている。

授業ビデオ

先学期と同じ方法で,今学期も授業をビデオ化し,授業サイトに掲載した。受講者はそれなりに活用していたようだが,それでも作成・掲載の労力に見合う効果が出ているかというと,怪しい気がする。省力化のためもあり,来学期からは授業ビデオの提供は辞めようと思う。

グループディスカッション

今学期も,基本的に昨年度・先学期と同じ内容で授業を行った。変更は,科学技術と現代社会の昼間部・夜間部すべてのクラスで,第14回にグループディスカッションを取り入れたことだ。先学期は,振り返りの前にグループディスカッションを入れたが,今回は順序を逆にした。先学期の受講者の意見を取り入れた結果だ。ただ,それによりこの授業で学んできたことがグループディスカッションに反映できたかというと,それはあまり関係なかったように思う。
グループディスカッション自体は,ほとんどのクラスで予想以上にうまくいった。ある程度人数がいるクラスならワールドカフェ方式を使うと,それなりに議論がはずむ。ただし,全受講者4名のクラスではワールドカフェ方式は使えず,1班で1時間あまり議論したが,ほとんど行き詰まっていた。教員が介入したが,まったく不活発なものに終わった。

ルーブリック

昼間部の科学技術と現代社会で,先学期と同じように,ルーブリックを用いた評価を導入した。今学期は,中間レポートを課し,そこでもルーブリックによる評価を行ったので,それを学生が期末レポートの執筆に活かせるかと考えた。確かに,期末レポートの質は上がったが,それがルーブリックによる評価のためかどうかは分からない。中間レポートを第13回の振り返りで講評したが,おそらくそれが参考になったのだと思う。ルーブリックによる評価は,学生同士でそれを用いた相互評価をさせることにより,活きていくのではないかとも思う。

MOST

今年度は,京都大学高等教育研究開発推進センターの第3期MOSTフェローとなり,昼間部の「科学技術と現代社会」の授業改善を進めた。その一環として,MOST(Mutual Online System for Teaching & Learning)というウェブ上のシステムにコースポートフォリオ(授業に関わる情報を集約したもの)をまとめた。まだ作成途中であり,一般公開しているものではないが,ここにリンクを張っておく。この内容は,3月に京都大学で開催される第21回大学教育研究フォーラム(3/14二日目午前, 部会10)で口頭発表する予定である。

授業SNSを用いた協調学習統合型講義

終わりに

これで,授業SNSを取り入れた授業を4年間行ったことになる。自作のシステムもかなりこなれて,使い勝手はよくなったと思う。しかし,聞いたことや思ったことを反射的に入力することが果たして学生の勉強になっているのかどうか。学生には,じっくり考えることを求めているのに,それとは逆のことを強いているような気もしてきている。じっくり考えるもっとも良い方法は,本を読み,文章を書くことだ。授業SNSを用いた授業の聴講とともに,授業サイトに掲載した資料を読むことを求めてきたが,後者の方は学生の自主性に任せていたので十分活かされていなかったように思う。来年度は,そちらに力点を置いて,これまでとは少し違った授業を模索してみたい。