スパイダー討論の中間振り返り

今学期,初めて授業にスパイダー討論を取り入れた。学期の半分以上が過ぎ,その成果と課題が見えてきたので記録しておく。

スパイダー討論は,ほぼ毎回の授業の後半に約30分かけて行っている。その進め方は次の通りである。

  1. 授業前半の講義の前に,討論テーマを予告する。
  2. 講義・ミニレッスン1のあと,討論テーマを再度説明し,自分の意見をディスカッションレポート用紙に記入させる(5分)。
  3. グループで討論を行う(15分)。
  4. グループで,今回の討論に関してルーブリックを使った振り返りを行う(5分)。
  5. 各自,今回の討論から学んだこと,グループ討論の反省などをディスカッションレポート用紙に記入する(5分)。

成果

グループ討論を繰り返すことで,人前で自分の意見を述べることに対する抵抗感は少なくなっているように思う。最初の頃は,全く誰も話さないで静かになっている班もあったが,今ではエンジンがかかるまでに時間がかかる班もあるが,討論終了時までにはどの班もそれなりに活発な意見の交換が行われるようになった。

グループ討論の成果をレポート執筆にある程度活かすこともできている。中間レポートのひな形で,グループ討論での班員の意見に対して自分の意見を主張する形を示したためもあり,ほとんどの受講者がグループ討論の経験をレポートに活かすことができた。レポートとは紙の上で行う一種の討論であるということの第一歩は踏み出せたと思われる。

課題

実際にスパイダー討論を試してみて,課題もたくさん見えてきた。以下に列挙する。

  1. 現在最も痛切に感じている課題は,グループでの振り返りの不十分さである。私としては,最低7分くらいはかけてじっくり振り返って欲しいと思っているが,実際には数分,短い班は2分程度で終わらせている。そのため,振り返りが次のグループ討論の向上に活かされていない。その原因が,アロンソン/パトノー『ジグソー法ってなに?』を読んで分かった。その本では,ジグソー法のグループ活動を行ったあとの振り返りについて書かれているのだが,そこでは,まず個人で振り返り,その後でグループで共有するように言われている。いきなりグループで振り返りをすると,適当な評価で済ませてしまう結果となると書いてあった。まさに私の授業の現状はその通りだ。改善方法としては,まず各自が振り返りを行い,その後で各自の結果をグループで発表しつつ,結果の一覧表を作成させて,それを見た上でグループとしての評価を考えさせるのがいいと思う。また,その回の討論で得られた成果を短くまとめさせて,クラスで発表させてもいいだろう。そうすれば,いい加減な振り返りは許されない。
  2. グループ討論と意見発表会の違いがまだ良く分かっていない。班によっては,まず順番に全員が自分の意見を発表したあとで,討論に入るのだ。討論時間は限られているのだから,最初の意見発表は省略した方がいいのだが,そう言ってもなかなか直らない。討論とは何かが分かっていない証拠だ。これを改善するには,やはり討論とはどのようなものか,その見本を経験させることが必要だろう。方法としては,グループ討論の台本を用意して,それを用いてロールプレイをすることが考えられる。
  3. チームで協力して良い討論を行うという意識が希薄だ。あからさまに非協力的な態度をとる学生はほとんどいないものの,チームワークを意識している学生も少ない。これを改善するには,アイスブレーキングと呼ばれているようなチーム形成活動を行うことも有効かも知れない。先のアロンソンの本にも,ジグソー法の授業の最初にはチーム形成活動を行うことが書かれている。また,グループ討論の目標が明確でないことも,積極的に協力しようという意欲を高めることにつながっていないように思う。グループ討論の目標は,新たな発見や理解の深化であり,それはルーブリックの項目にも上げてあるが,曖昧な形で「達成した」とされていることが多いように見受けられる。それを改善するには,先に挙げたとおりクラス発表が有効だろう。
  4. リーダーシップをとる学生がいない。特定のリーダーをきめなくても,班員全員が協力的であれば,グループ討論はうまく行くはずである。しかし,協力的な学生が少ない班ではリーダーが必要だ。そのような状況においては,誰かがリーダーシップをとることが望まれるが,そのような学生がいない班が少なくない。リーダーという役割を設け,輪番でリーダーシップをとる経験をさせるとよいかもしれない。

いずれにせよ,現在の30分の時間では,上記の課題を解決するには時間が足らない。毎回の授業でグループ討論を行う現在のやり方をかえて,グループ討論は隔週に行い,45分から50分かけて行うことを考えたい。1コマ100分ないし90分の授業では,半分の時間が残るが,その時間はレポート執筆関係の活動をさせればよいだろう。

他方,討論の週以外は,講義の週とするが,講義を1コマ続けるのは良くないので,ジグソー法によって学生が協力しつつ情報を得る活動を含めるとよいと思われる。1学期の授業で学ぶテーマの数は減るが,その分中身の濃い授業となるであろう。

【天気】曇り。

  1. ミニレッスンでは,グループ討論やレポート執筆をうまくやる上での様々なスキルの説明をする。