来年7月24日にテレビの地上アナログ放送が停止されるが,わが家はアナログ放送しか受信できないブラウン管テレビをできるだけ使っていこうと思っていた。エコポイントが12月から半分になるという話が出てきて少し慌てたこともあったが,エコポイントをもらうためにテレビを買い替えるのもおかしいと思い,結局急いで地デジ対応テレビを買うことはしないことにした。しかし,11月にAppleTVが発売された。これはテレビにHDMI端子がないと簡単にはつなげられないということがあり,残念だがやはり新しいテレビに替えることにした。それならエコポイントが半分になる前に買おうということで,11月11日に通販で購入した。届いたのは同月23日である。
11月下旬に電器店を訪れた時は,テレビを買うお客が整理券をもらって行列していた。エコポイント半減の前に殺到していたのであろう。この急激な需要増に対応して,テレビの価格は急騰していたようである。そして12月に入って需要が減るとともに価格も下がり,12月下旬の現在は11月以前の水準まで下がっているようだ。私が買ったモデルについても,11月中旬から下旬にかけて1万円くらい上がっている(価格.comの価格変動グラフ)。最高値の頃に買った人は値上がり分がエコポイントと同じくらいになっている(多くのエコポイントをもらうために急いで買っているにもかかわらず!)。たとえエコポイントが半分になっても価格が下がってから買った方が得になっただろう。買い替え分にしかエコポイントがつかない年明け以降は,さらに需要が減って価格が下がるだろう。今後エコポイントのような制度が繰り返されるかどうか分からないが,今回の騒動はよい教訓を与えてくれる。
さて,エコポイントに振り回されるのは大変腹立たしいことだったが,それよりも腹立たしいのは,地上デジタル放送にスクランブルがかけられており,それを解除するためにB-CASカードが必要になっていること,そしてその理由がコピー制御を強制するためだということである。本来有料放送を送信するために行われているスクランブルをなぜ無料の地上デジタル放送にかけなければならないのか。その理由が,コピー制御機能を無視する業者にはB-CASカードを配布しないということで,地デジ放送には必ずコピー制御が行われるようにするためだという。著作権法によれば,私的利用や学校での教育利用においては一定のコピーが許されているにもかかわらず,技術的にすべてのコピーを禁止しているのだ。テレビ放送をいろいろ編集して授業に利用してきた私としては,地デジ化は利便性の低下以外のなにものでもない。地デジ放送も画質を落とせばコピーできないこともない(たとえばVHSビデオデッキを利用するなど)ので,何とか工夫して対応していこうと思っているが,来年7月までの録画はできるだけアナログ放送を録画している。その際,テレビ画面の下に地デジへの切り替えを呼びかける文言が頻繁に表示されるのが腹立たしい。
スクランブル放送やコピー制御のみならず,番組の良いところでCMを入れて視聴者をいらいらさせること,あるいはどれほど優れた番組でも再放送はほとんどせず,ビデオなども販売しないことなど,挙げていけばきりがない。テレビ局はなぜこれほどまでに視聴者の利便性を無視するのか。その理由は,途中を省略して結論のみを言うならば,広告料を最大化するためであろう。しかしそれは,視聴者のテレビ離れを引き起こし,結局は広告料の減少を招くことになるだろう。私には,現在のテレビ局がやっていることが,自滅行為であるように思えてならない。(なお,NHKについてはここでの議論が成り立たない部分もあり,また民放にはない特殊な問題もあるだろうが,ここで詳しく議論する用意は私にはない。ただ一つだけ問題を指摘しておくと,有料放送を行っているNHKこそスクランブルをかけ,受信料を払っている人にのみスクランブルを解除するB-CASを配布するべきだろう。NHKを見ない視聴者は,テレビを持っているだけで無駄な受信料を強制的に払わされている。これも,人々をテレビ離れさせる一つの要因になるだろう。)
参考:
・情報通信審議会中間答申(2008年6月27日)を読むと,なぜ無料の地デジ放送にスクランブルをかけるのかが分かる。
・2010年7月24日のマル激トーク・オン・ディマンド「電波の私物化を許すべからず(ゲスト:池田信夫氏)」では,なぜ2011年7月24日にアナログ放送が停止されるのかを電波利権の観点から解説している。
追記:
現在は,UstreamなどでCDなどの楽曲を無断で流すことは原則としてできないことになっている(著作隣接権侵害になるため)。しかし,非営利の送信では,自分の楽曲を使ってもらってもよいというミュージシャンもいると思われる。しかし,そのような場合でも,現在の音楽著作権管理制度では簡単にはできないようだ。そこで,自分の楽曲の著作権を自分で管理して,これまで簡単にはできなかったような楽曲の利用を進めようとしているミュージシャンが登場した(向谷実さん)。このように,これからは現在の技術が可能にする現実にマッチした著作権制度を再構築していく必要があるだろう。
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