- ジョン・エルス監督,富田晶子・富田倫生訳『ヒロシマ・ナガサキのまえに——オッペンハイマーと原子爆弾』ボイジャー,1996.8.6,CR-ROM(エキスパンドブック)
電子ブックの一形式「エキスパンドブック」で作成された映画The Day After Trinity(88分)の日本語字幕付きQuickTimeムービーと関連資料(邦訳)。映画は1980年に制作され(公開は1981年?),CD-ROMの英語版は米ボイジャーが1995年に制作したという。これはその日本語版のようだ。とりあえず,映画のみ見た。
映画の監督はJon Else。彼は最近では2007年にWonders Are Many: The Making of Doctor Atomic(日本語版:ドクター・アトミック ~科学者オッペンハイマーの実像~)を監督した。また,映画The Atomic Cafe(1982)のスタッフも務めているようだ。原爆関係の作品が多い。
オッペンハイマーを中心にして,原爆開発から広島・長崎への投下,そして戦後の水爆開発とオッペンハイマーの公職追放までを,関係者およびオッペンハイマーの証言で構成している。映画では割愛されたインタビューなどもエキスパンドブックの中に収録されている。全体の歴史を概観するのに便利であると共に,科学者たちがどう考えていたかが分かる。ただ,証言映像を中心にしているため,撮影当時存命でない科学者はオッペンハイマー以外ほとんど出てこない。
パッケージに記された主な内容は以下の通り。
- 映画本編88分をクイックタイム・ビデオで完全収録(日本語字幕付き,拡大表示も可能)
- 監督ジョン・エルス他による撮影エピソードとドキュメンタリー映画論
- マンハッタン計画に関係したノーベル賞受賞学者多数へのインタビューを完全収録
- オッペンハイマーとマンハッタン計画に関するFBIおよび軍関係の機密文書を集成
- 写真集,登場人名録,用語解説
- 広島市長による「国際司法裁判所における陳述」等,参考資料を満載
1996年発売のものなので,現在のパソコンですんなりと見ることができるとは限らない。私は予備のパソコンにWindows 98をインストールし直して見た。
登場する証言者の発言はどれも興味深い。私は映画を通して見たが,それでは一つ一つの証言の意味を十分理解することは困難だった。ムービーを適宜止めて,あるいは巻き戻して考えながら,また関連資料を参照しながらじっくり味わうべき作品なのかも知れない。
この作品は版元のボイジャーからまだ購入することができるようだが,現在のパソコン環境に合わせた改訂版は出ていない。
参考:ヒロシマ・ナガサキのまえに(ボイジャー)
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