理研のサイクロトロンの実験日誌が発見されて,戦時中の日本の核物理/原爆研究に関心が集まっているが,ちょうどいいタイミングで市民科学研究室の次の講座が開かれる。
第28回市民科学講座
「戦時下の科学――ドキュメンタリー『よみがえる京大サイクロトロン』を見て」
戦時期日本でも原爆の研究をしていた。戦後、原爆研究とのかかわりからGHQに 破壊されたはずの実験装置の一部が、ひそかに京都大学に残されていた。この話 を丹念に追ったドキュメンタリーを見て、戦争・原爆と科学者の歴史と現在について考えてみよう。
日時:8月2日(土)午後2時(開場1時半)~5時
場所:アカデミー文京 学習室(地下鉄「春日」駅横 文京シビックセンター地下1階)
資料代:1,000円
主催:NPO法人市民科学研究室・低線量被爆研究会
<『よみがえる京大サイクロトロン』について>
被爆国日本も原爆開発に取り組んでいた。海軍から資材提供を受けて建設されていた京都帝大の加速器サイクロトロンは,終戦後,原子核研究を禁じたGHQの “蛮行”によって破棄されてしまう。ところが,その主要部品が破棄を免れ,博物館の収蔵庫にひっそりと保管されていたのだ。荒勝文策,湯川秀樹ら物理学者たちは,どんな思いで戦時下の原爆や原子核の研究に取り組んだのか。歴史を語り合うための映像作品(中尾麻伊香監督,林衛ほか制作)。
ドキュメンタリー作品「よみがえる京大サイクロトロン」は,私が見たかったものだ。先に上映会が京都で開かれたが,参加できなかった。今度は是非参加したい。
*
上記上映会とその後のディスカッションに参加した。作品は,監督の中尾さんがポールチップ(サイクロトロンの部品)との関わりで取材したことが丁寧に描かれている。何らかのメッセージを伝えるための作品ということではなく,見る人にいろいろなことを考えさせてくれる作品だ。作品を見た後に,みんなで語り合うという上映形式が最適で,今回も興味深い議論が展開された。
京都大学は,ポールチップという貴重な歴史資料を,自らの大学の歴史にうまく位置づけられないということで,まだ展示はしていないということだった。このことがとても印象に残った。それは,アメリカの核実験場博物館が被爆資料を展示できないのと同じだ。それを思い出させる作品の冒頭のアメリカ取材がとても効いている。冒頭でアメリカのおかしさを感じた観客は,それと同じおかしさを京都大学に感じることになる。
私にとって京都大学の物理学者たちが原爆研究に関わっていたことは自明のことで,それを認めることに何のためらいもないが,そのことが未だに微妙な問題をはらんでいることを強く感じさせられた。