三輪芳朗『計画的戦争準備・軍需動員・経済統制——続『政府の能力』』有斐閣,2008.3.31,560p,本体5000円
付図(関係地図)4枚,引用文献(一覧),事項索引,人名索引を含む。
2008.8.15読了。大部の著作のため3か月かかった。この著作の第7章は次の2篇の別論文となっており,その合計ページ数は102pである。したがって,本書は実際には662pあることになる。
- 三輪芳朗「『物資動員計画』,『生産力拡充計画(政策)』,経済統制(1)(2)」『経済学論集』73巻3号(2007.10): 1-59; 73巻4号(2008.1): 16-58. pdfはこちらから入手可能
著者の主張は単純である。要するに,明治以来の日本の経済発展において政府の役割の過大評価は誤りだということである。それを,最も政府の役割が発揮されるはずの戦時において確認するというものだ。
著者は,そうした過大評価が強固な「通説」「常識」「通念」となっていると考え,これを粉砕するためにこの著作を書いたようだ。しかし,少なくとも科学技術史の分野では,戦時において日本政府の能力は貧弱だったことがまさに「通念」となっているため,本書の主張のインパクトは極めて弱いと思われる。
私にとって勉強になったのは,ソ連の計画経済の見直しなどについて紹介したIntroductionと,軍需動員・国防方針・物資動員計画等についてまとめた第5・6・7章である。