イマヌエル・カントと言えば、誰でも名前だけは知っている18世紀ドイツの哲学者だが、その主著『純粋理性批判』を通読したことのある人はかなり少ないに違いない。私も最初の数ページで投げ出した。哲学が難しいというイメージにぴったりの本だ。
しかし、カントが哲学部の教員(今日で言えば教養科目担当)であったことを考えると、学生にそのような難しいことばかり教えていたわけではないのではないかとも思う。最近新訳が出た『啓蒙とは何か』では、理性を使う勇気を持つこと、簡単に言えば、自分の頭で考えるようになること、これが啓蒙だという。そのようなことを言っている大学教師なのだから、当然自分の授業でも学生をそのように教育していたに違いない。
では、カントは大学でどのような教育をしていたのか。博学で広い分野の知識を持ちつつ、しかも極めて体系的・抽象的な学問を構築したカントの教育から、今後の教養教育のあるべき姿が見えてくるのではないか。
最近のシラバス検討会で、学生の興味に沿いつつ体系的学問をどのように教えたらいいのかという問題が議論になったが、急にカントのことを知りたくなった。
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