本学の2006年度の全容をデータで明らかにする「TDUデータブック2006」が公開された。これだけ膨大な資料を作成した事務職員の方には感謝しなければならない。その苦労を無にしないためにも,このデータをきちんと分析する必要があるだろう。
私がまず注目したデータは,学生一人当たりの年間平均履修単位数と年間平均単位取得率である(2-3-1教育内容・方法等)。工学部第一部では,履修単位数が40〜45単位とかなり多い。1単位とは,1週間(45時間)で学習できる内容のことだが,本学では年間授業週数は30週弱。したがって,10単位以上の科目は勉強時間不足となり,単位取得が困難になるはずである。実際,工学部第一部の平均単位取得率は76%で,ほぼ予想通りの結果になっている。他方,理工学部と情報環境学部の履修単位数はそれぞれ34〜43単位と31〜38単位と(学科ごとに異なるが)工学部より少なく,そのため単位取得率はそれぞれ81%と85%と高くなっている。履修単位数が少ないほど単位取得率が高くなっていることから,工学部はかなり過剰履修となっていることが窺える。このことは,過剰履修を防ぐ意味で設けられた「履修単位数の上限設定」(半期26単位,年間52単位,成績優秀者にはさらに半期4単位追加。つまり年間60単位まで履修可能!)が意味をなしていないことをも証明している。
工学部と情報環境学部の違いは何に起因しているか。その要因の一つに学生側のコストの問題があるだろう。情報環境学部では,単位従量制の学費となっており,多くの単位を履修するほど学費が高くなる。工学部はいくら登録し,単位を落としても学費は変わらない。たくさん登録しておいて,楽に単位が取れそうな科目のみで単位をとることも可能である。他方,大学側・教員側には,履修登録が多いほどコストがかかる。教員・教室・教材など,登録数に合わせて用意しなければならない。それで安易に受講放棄されたのではたまったものではない。情報環境学部のように履修単位数に応じたコスト負担を求めるか,履修可能単位数の上限をもう少し引き下げるべきだと思う。
もう一つ目に付いたデータは,クラスサイズの分布である(2-3-1-(1)-26)。工学部第一部は,3年前に比べて少人数クラス(1〜15人)が65科目から147科目へと2.3倍に増え,逆に大規模クラス(151人以上)が117科目から57科目へと約半分となった。これはきめ細かな教育が行える条件としてとても良いことだが,逆に経営コストを上げているかもしれない。また,授業によっては受講者が少ないと活気がなくなって良くない場合もある。適正なクラス規模になるような仕組みが必要だろう。この件についてはより詳細な調査が必要なのではないだろうか。