大学紀要の使い道

 理系の大学にいると、大学紀要の位置づけが極めて低いことに気づかされる。紀要は査読に耐えないダメ論文の発表の場、業績をでっちあげるための手段と考えられることも少なくないのではないだろうか。そのため、紀要に掲載された論文は業績にカウントされず、紀要に投稿しようという教員のインセンティブを下げ、その結果ますます紀要の質が落ちていく。悪循環である。
 それなら経費節約のためにも、紀要など廃止してしまえば良いのだろうか。私は紀要にも使い道があるので廃止はもったいないと考えている。
 まず、自由に投稿できるメディアがあるというのは、新しい研究をしたいときには便利である。新しい研究というのは時に既存のメディアに受け入れられないことがある。そのようなとき、まず紀要に発表し、そこから新しい分野が発展していくこともあるだろう。
 また、教育論文を載せてくれるメディアはまだ限られているので、それを掲載するというのも紀要の重要な役割だと思う。FDが重視されてきている現在、その重要性はしだいに増し得いくことだろう。大学教員は研究論文だけを書いていればいいという時代はいずれ終わるかもしれない。
 私は、昨年後期から授業サイトをMoodleで作り始めた。1年の経験をもとに、それについて報告をまとめてみたいと思っている。そうした報告を投稿する場として紀要はとても有り難い。

追記
 今年度からNIIでは学術雑誌公開支援事業を始めている。これは、紀要などを電子化して、オンラインで公開するというもので、とかく入手しにくい紀要の活用を進める有効な手段となるだろう。本学でもこの制度を利用すべきだ。

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