文章上達法

 ウェブページなどの電子テキストの普及により手軽に他人の文章をコピーできるようになった。これは他人の文章をあたかも自分の文章のように使ってしまう誘惑を招き、教育上好ましくない側面がある反面、今までにはなかった利点もあると思う。
 特に外国語学習の点では、メリットが多大だと思う。日本人が英語のうまい言い回しを使いこなすのはなかなか難しいものだ。学問の世界では、特有の言い方があるので、それなりに会話はできたとしても、適切な文章を書くのは決して易しいことではない。ではどのように勉強するか。よい先生について添削を受けながら勉強するのがたぶんベストだが、それは実際にはなかなか難しい。できれば自学自習でなんとかしたい。そこで、電子テキストが活用できるのである。
 たとえば、書評でよく使う言い回しはどのようなものか。書評というのは結構気をつかうのものである。一方でほめながら、他方で批評する。特に著者が知り合いだったりするとなおさらだ。日本語でなら何とかなっても(それでも難しいが)、英語となるとかなり苦しい。
 そこで、英語で書かれた書評の電子テキストから言い回しの部分だけを抜き出す。これはコピーアンドペーストでもよいし、その部分をハイライトするのでもよい。電子テキストなので、あとで探したい時は検索をかければよい。こうして適切な表現を学んでいくのである。このようなことはかつては不可能であった。もちろん原理的には手書きあるいはタイプライターを使ってカードでも作りながらやれば可能である。実際、昔あった英語言い回し辞典のようなものはそうして作られていたのであろう。しかし、英語学者になるのならともかく、英語を手段として使う者としてはそこまでできない。しかし、電子テキストがあれば可能なのだ。
 実は、これは日本語の文章の上達にも役立つ。特に、学問的な文章を書くことに慣れていない学生にとっては、日本語の電子テキストで同様の勉強ができるだろう。接続詞の使い方などといってフレッシュマンセミナーで取り上げていたが、小中学校の国語のレベルだと馬鹿にされていた雰囲気がないでもない。しかし、学術的な論文を示した上で、その中から他の場合にも使えそうな良い表現を拾い出すという課題は、大学生にとっても興味深いのではないだろうか。

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