「東京電機大学という大学名を変えたらどうでしょうか?」という意見が「意見箱」に寄せられている(Q84)。地味、古い、誤解される、などそれなりにもっともな理由が挙げられている。
しかし、電機大の「電機」は一種の固有名詞なのだということを知ってもらいたい。英語名はTokyo Denki Universityであって、ローマ字でDenkiとなっていることからもそのことが分かる。(この英語名称に不満を持つ教員は少なくないが、私はこれでいいと思っている。法政大学の英語名がHosei Universityであるのと同じだと考えればよい。)かつてはTokyo Electrical Engineering Collegeなどとも訳され、電機を電気工学として訳したわけだが、これでは確かに機械、化学、建築、情報などさまざまな工学分野を扱っている本学の現状とは合わない。様々な工学分野をすべて包括する名称としては「工業」「工科」「工学」などの言葉を使うしかないが、東京工業大学、東京工科大学、工学院大学など既存の他大学とぶつかってしまう。また、一般的な概念に埋没して、本学の個性も失われてしまう。個性とは歴史・履歴のことだ。
本学の母体は今から100年前に誕生した「電機学校」だ。「東京電機大学」というのは、この電機学校の伝統を今に受け継ぐ大学としての個性を体現しているのであって、「東京にあって電気機械の工学分野を教える大学」ということではないのだ。東京電機高等工業学校、東京電機工業学校、電機工業専門学校、電機第一(第二)工業学校、電機学園など、電機学校以来、本学関係の組織は「電機」という言葉を共通にもっている。人間でいえば、「電機」家一族の名字のようなものだ。そして、私の知る限り、日本に700以上ある大学のなかで「電機」と名の付く大学は東京電機大学しかない。大学としてはとてもユニークな名前なのだ。確かに分かりやすくはなく、新しくもないが、だからといって分かりやすく、目新しい名称に変えればよいというものではない。
多くの歴史ある地名がどんどん無くなっていき、読めばすぐにその意味が分かるようなつまらない地名が増えつつある日本にあって、「東京電機大学」という名称に誇りを持つ学生(卒業生)を育てていかなければならないと思う。フレッシュマンセミナーはその一つの場となるだろう。
1/18追記
大学からの回答:
東京電機大学は、今年で100周年を迎えます。
1907年(明治40年)、電機学校として産声をあげ、昭和24年の学制改革に伴う学校教育法制定につき、東京電機大学として新たに誕生しました。
この校名は何度か変更の話がありましたが、その都度、代々続いてきた伝統と校風、建学の精神を大切にするために現在の校名が引き続き採用されてきました。
従いまして名称変更はあまり現実的な話ではありませんが、今回頂いたご意見を今後の大学運営の参考とさせていただきます。
参考
本ブログ記事「電機学園工業大学」(2007.4.19)