教育再生会議第1次報告(骨子案)

 昨日の教育再生会議で議論された「第1次報告(骨子案)」を読んでみた。最後に書いてあった「教育再生の今後の検討課題」には次の文言がある。

(3)高等教育、特に大学院における教育について、国際競争力の強化のための「プロジェクトX」※の検討を行います。大学の入学・卒業制度、大学入試などの「入口」重視から卒業認定などの「出口」重視への方向性についても検討します。

 「出口」重視ということは、8年前の大学審議会答申ですでに謳われていたことだが、未だに実現していないので何度でも出てくるのだ。この会議ではどのような具体的な対策が提言されるか見守っていきたい。

 大学教育に携わる者としては、もう猶予が許されない段階に来ていると感じている。多くの大学は、入試で思うような選抜ができなくなっている。これまでの教育のやり方を続けたのでは、これまでの卒業生のレベルを維持できない段階にすでに突入しつつある。定員割れという経営上の危機感はそれなりに共有されているが、自らの教育を変えなければならないという危機感は未だに共有されていない。


参考
 大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策について ―競争的環境の中で個性が輝く大学― (答申)」 (平成10年10月26日)から引用。

ii) 成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施
 大学の社会的責任として,学生の卒業時における質の確保を図るため,教員は学生に対してあらかじめ各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに,成績評価基準を明示した上で,厳格な成績評価を実施すべきである。なお,厳格な成績評価の実施の結果,留年者による収容定員超過が生ずる可能性があるが,こうした定員超過については大学の設置認可や私学助成の際に弾力的に取り扱うことが適当である。

(ア)卒業時における質の確保
 高等教育の大衆化と学生の多様化が一層進展する中で,各大学はそれぞれの個性・特色を発揮しつつ,学部段階における教育機能の充実強化を通じた卒業生の質の確保を図ることが必要である。
 従来,大学卒業生の質は,大学において何を学んだかということよりも,どこの大学を卒業したか,言い換えればどの大学に入学したかによって判断されているという批判がある。大学は公共的な機関として,社会に貢献する人材の養成に当たるという役割を担っており,学生に高い付加価値を身に付けさせた上で卒業生として送り出すことは大学の社会的責任であるということを十分認識する必要がある。

(イ)成績評価基準の明示等
 学生の卒業時における質の確保を図るため,教員は学生に対してあらかじめ各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに,成績評価基準をシラバスなどに明示した上で,厳格な成績評価を実施すべきである。成績評価基準は各授業科目を担当する教員が授業の目的等に沿って適切に定めるべきものであり,学期末の試験のみでなく学生の授業への出席状況,宿題への対応状況,レポート等の提出状況等,日常の学生の授業への取組と成果を考慮して多元的な基準を設定することが望ましい。
 学生の学習効果を高めるためには,1学期の中で少数の授業科目を集中的に履修し学期ごとに完結させる制度であるいわゆるセメスター制等の導入を促進し,学期の区分ごとに授業科目を完結させて成績評価を行い次の学期の学習につないでいくことが重要である。

(ウ)厳格な成績評価
 厳格な成績評価については,例えばGPAと呼ばれる制度を活用した取組を行っている大学(注*1)もある。
 各大学においては,このような例も参考としつつ,各大学の状況に応じた厳格な成績評価の仕組みを整備していくことが必要である。なお,厳格な成績評価の実施により最低限の質の確保を行うと同時に,優秀な成績を修めた学生には表彰を行うなど,学生の学習意欲を刺激するような仕組みを導入することも重要である。