昨日、『大学教育学会誌』28巻1号(2006.5)が届いた。その中に、半田智久「GPA制度:カテゴリー錯誤の問題と解決」という注目すべき論文が載っていたので、早速読んだ。
GPA(Grade Point Average)とは、それぞれの科目のS,A,B,C,Dといった成績を4,3,2,1,0といった点数に置き換え、ある学生が履修した科目全体(単位を取らなかったものも含む)を1単位当たりの平均として出したある種の平均点のこと。アメリカの大学では一般的に導入されており、日本でも最近はかなりの数の大学で導入されてきている。このGPAの問題とは、もとの100点満点の成績からいったん精度の荒い表現(4,3,2,1,0)に変換し、それをもとに再度小数点以下まで平均点を計算するということにより、100点満点の成績で直接平均点を出した場合とGPAでは、成績の順位がかなりの頻度で入れ替わってしまうということだ。半田氏はシミュレーションの結果を示しているが、その入れ替わり方は私の予想以上だった。GPAを非常にラフな指標としてかなりおおらかに利用する分には問題は少ないだろうが(たとえば、明らかに成績不振の学生を大量の学生の中から選び出す場合など)、それを奨学金交付の要件などに使うとなるとかなり問題だ。
この問題の原因は100点満点で付けられている成績をわざわざ荒い尺度に変換することにある。そのような変換をすることなく直接GPAを計算すれば問題はない。その計算方法として半田氏は4つの方法を提示している。(GPからGPAを計算する方法は省略。)
(1) GP=(TS-55)/10 ここで、TSはTest Score(100点満点での点数)。GP≦0.5はGP=0.0とする。以下同様。
(2) GP=(TS-50)/10
(3) GP=(TS-60)/10
(4) 100点満点の点数ではなく、最初からGP(例えば、4.0〜0.0点)で成績を付ける。
GPの最高点が4.5となり、合格最低点が61点となることを認められるなら、(1)が最もよい解決のように見える。(多くの大学では、GPの最高点は4.0、合格最低点は60点。)本学もGPAの導入を検討している。こうした議論は是非参考にするべきだろう。