千葉大学がロボット憲章を制定したということを知った。科学技術倫理の面からとても注目すべき事例だと思う。
千葉大学ロボット憲章
(知能ロボット技術の教育と研究開発に関する千葉大学憲章)最近のロボットの研究開発における進歩は著しく、産業用ロボットにおいて世界をリードする我が国では、第3次産業のサービス分野までも含めた現実の日常生活のなかで、「知能ロボット」が人間の身近な存在になろうとしている。
「知能ロボット」は、従来型の「ロボット」と異なり、自ら自己を律する自律制御系技術が組み込まれたロボットである。自律制御系の究極の姿の1つは我々人間を含む生物であるが、人類が創造したロボットの過去から現在、そして未来への進化は、この究極の生物の機能を模倣し獲得していく歴史でもあろう。遠くない未来社会においては、こうした生物の機能を部分的に有する、あるいは、一部生物の機能をはるかに超える「知能ロボット」が出現してくることは想像に難くない。
一方、先端的な科学技術には常に光と影が存在し、人類を幸福にする反面、これらの科学技術 が悪用されると人類存亡の危機に直面することは、これまでの歴史が証明している。現代社会において、先端的なロボットの研究開発に携わる者の責任は極めて重大である。
千葉大学では、地球生態系の維持・保全を基底に据えて、人間の尊厳、人類の福祉、恒久平和と繁栄、そして、安全安心な社会に資するロボット研究開発と教育をこそ率先して推進する立場から、ここに「千葉大学ロボット憲章」(知能ロボット技術の教育と研究開発に関する千葉大学憲章)を制定する。
第1条 (倫理規定)本ロボット憲章は、千葉大学におけるロボットの教育と研究開発に携わるすべての者の倫理を規定する。
第2条 (民生目的)千葉大学におけるロボット教育・研究開発者は、平和目的の民生用ロボットに関する教育・研究開発のみを行う。
第3条 (非倫理的利用防止)千葉大学におけるロボット教育・研究開発者は、非倫理的・非合法的な利用を防止する技術をロボットに組み込むこととする。
第4条 (教育・研究開発者の貢献)千葉大学におけるロボット教育・研究開発者は、アシモフのロボット工学三原則(注)ばかりでなく、本憲章のすべての条項を遵守しなければならない。
第5条 (永久的遵守)千葉大学におけるロボット教育・研究開発者は、大学を離れてもこの憲章の精神を守り尊重することを誓う。
(注)ロボットのあるべき姿を規定したアイザック・アシモフのロボット工学三原則は、次の通りである。
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間から与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。
2007年11月21日制定
千葉大学ロボット憲章(知能ロボット技術の教育と研究開発に関する千葉大学憲章)
【天気】曇り。寒い。上着の下にセーター。