新型インフルエンザH1N1が流行しつつある。これはリスク・コミュニケーションの非常にいい例だ。ちょうど科学技術コミュニケーションの授業で今週からリスク・コミュニケーションの内容に入るところだ。当初,BSE問題を扱うことにしていたが,新型インフルエンザについても取り上げることにしたい。ただ,現在進行中の事例なので,準備が十分にできないのはどうしようもない。
早速,日本・アメリカ・イギリスの政府機関による新型インフルエンザ関係サイトを見てみたが,提供されている情報や提供のされ方に違いが見られて興味深い。特に,日本の薬局で品切れとなりつつあるマスクについては,英米のサイトにはほとんど何も書かれていない。ウイルスの侵入を防ぐ効果はないとはっきり書かれていることもある。マスクは基本的に感染者がウイルスの入った飛沫をまき散らさないためだが,それについては,英米ではティッシュで口を押さえて,それをすぐ捨てるように書かれている。マスクの着用はそれほど重視されていない。マスクに予防効果がないことが一般の人々に明らかになったとき,日本政府はどう説明するのだろうか。
また,日本ではインフルエンザの症状が現れたら,発熱外来に行くよう言われているが,英米では自宅療養が基本だ。米CDCサイトでは,症状が出たら7日間は自宅にいるように書かれている。医者に行かなくても自然治癒する場合がほとんどだろうとも書かれている。要するに通常のインフルエンザとあまり違わない対応となっている。軽症者までが病院に殺到すると慢性病患者に感染させるリスクが高まり,かえって良くないかも知れない。
政府は冷静に対応するよう呼びかけているが,政府の取っている対策自体が国民の冷静さを失わせていることはないだろうか。水際対策として取られた物々しい対策がH1N1に対する恐怖を国民に植え付けたのではないだろうか。
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