科学史サマースクール

 8/27から8/29までの3日間,科学史サマースクールに参加。このサマースクールに参加するのは一昨年に続き2回目。今回のテーマは「どう教えよう? 科学史・数学史」ということで,大学での科学史教育,特にその実践が話題となった。高校以下の教員が自らの教育実践を報告し合うことは一般的だが,大学教員がそれをすることは極めてまれであった。特に,私の専門とする科学史の分野ではほとんど皆無だったといっていい。今回数学史研究会同人の方々によりこのような機会が実現したことに心より感謝したいと思う。

 さて,今回のサマースクールでは,それぞれの日の午前中に,大学での科学史教育について概観する講演が行われ,午後に実践報告が行われた。科学史は現在,大学の様々な学生に様々な目的で教えられており,その位置づけは極めて多様である。また,その位置づけはもちろん,教える教員の関心や力量に応じて,教える時代・分野・観点など様々な教え方が可能である。今回の実践報告は現在の科学史教育実践の多様性がかなり反映されていたし,また新米教員からある程度の経験を持った教員まで,その実践経験においても多様性が確保されていた。その意味で,こうした研修会の初回としてはかなり理想的な構成であったと思う。

 初日の夕方には,補講として「非常勤をはじめたら科研費に応募しましょう!」があった。非常勤講師でも科研費に応募できる方法を伝える貴重な情報だったと思う。

 シラバスはもちろん,授業資料の一部も配布され,ここで持ち帰ったものを今後の授業に具体的に反映することも可能である。まさに,高校までの教員による授業実践報告会と同様の機能も果たしている。

 私もワークショップで発表の機会をいただいたが,多くのコメントをもらい,今後の授業改善のヒントと励ましを得た。

 自分の授業について発表する大学教員には,まだ「恥をさらす」という意識が強いように思う。しかし,これは単に慣れの問題だと私は思っている。回数を重ねれば,研究報告と同じように教育実践報告もできるようになるはずだ。また,本当に恥ずかしい実践しかしていないのだとしたら,それは問題であり,恥ずかしくないように改善すべきであろう。

 このサマースクールには院生やポスドクなどの若手科学史家が多く参加している。この若手が中堅になる時代には,大学教員による教育実践報告はごく普通のことになっているかもしれない。今後が楽しみだ。

【天気】曇りのち雨。総選挙投票日。