ここで言っているのは,長髪の学生ということではなく,授業中に髪の毛を伸ばす器具(ヘアーアイロンというらしい)を使って髪を伸ばしている男子学生がいたということである。寝癖のついた髪を電熱線で温めた2枚の板に挟んで伸ばすような電気器具である。ちなみに,この教室には全ての席に個人用のコンセントが付いている。
まず,そのような器具を大学に持ってくること自体が私には不思議だが,それを授業中に教員の目の前で使っていることがなお信じられない。31名のクラスだ。嫌でも目に入ってくる。
17年近くの教員生活で初めての体験だった。私はちょっとショックを受けたので,その場で注意をする気にはなれず,授業が終わってから,私の気持ちを学生に伝えた。学生は,自分が何か悪いことをしたのかというようなきょとんとした顔をしていた。
その「事件」の前にも,授業が始まるなり,シュポッといういい音を立てて缶の蓋を開けている学生がいた。朝の9時から宴会か?と思ったら,缶コーラだった。夜間の授業ならまだ許せるが,朝の1限からくつろぎすぎでは? これも一言いいたかったが,授業が終わってから言った。
彼らに共通しているのは,全く悪気がないことである。優等生的ではないが,かといって不真面目そうな学生でもない。いやむしろ真面目だ。話してみてそう思う。ただ気の使いどころが違うのだろう。
これまでは,「行為」を発見し次第,その場で(大声で)注意することが多かったが,最近は悪いと思っていない学生にどれだけ意味があるのかと疑問を感じて,静かに自分の気持ち(不快感)を伝えるようになっている。これで少なくとも私がどのような感性・価値観を持っている人間なのかは分かってもらえるだろう。また私自身の気も少し収まる。異文化コミュニケーションのトレーニングが必要かもしれない。
【天気】雨のち晴れ。