The Education of Historians for the Twenty-first Century

 Thomas Bender et al., The Education of Historians for the Twenty-first Century (Urbana and Chicago: University of Illinois Press, 2004)を読了。これはAmerican Historical Associationの大学院教育委員会がアメリカの大学院課程を持つ歴史学科を対象に行ったアンケート調査の結果を分析したものだ。質問項目は膨大なものであり、質問紙を通読するだけでも大変なものだ。アメリカの大学院教育は優れているという評判があり、確かにそう思うが、それでも問題はいろいろあるようだ。それは日本と共通のものも多いように思える。したがって、この本で提示されている提言は日本にも当てはまるものが多いように思う。
 私が強く印象づけられたのは、アメリカの歴史学大学院教育ではアカデミックな研究者志向が強すぎるということだ。自分の研究領域を限定し、深く研究して1冊の専門書を書き、大学の教員になるということを目標にすることが、院生と教員の間で一般的だという。歴史学を生かせる職業は他にもいろいろあるのだが、そうした方面にはあまり関心が払われていない。これは日本でも共通だろう。特に大学教員以外の道がアメリカよりも少ない日本ではさらにその傾向が強い。
 日本人は、古い伝統を誇りにしているわりには歴史学に関する関心が極めて低い。最近ますますその傾向が強くなっているように思う。しかし、歴史学の重要性を一般の人々に伝えきれていないことの責任は歴史家にある。そして、このような事態を招いた原因の一つが、歴史研究者養成のあり方にも存在すると思われる。
 さて、Benderの本では、アンケート調査のなかで訪問調査すべき先進的な大学院を聞いているが、その結果次のような大学が挙げられ、訪問したという。どのような特徴があるのかウェブ調査してみたい。
 Northeastern University
 Howard University
 Florida International University
 Columbia University
 University of Michigan
 Arizona State University
 University of South Carolina
 Ohio State University
 Stanford University

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