後期の科学技術史Bでは、廣重徹の『科学の社会史』をテキストにして、明治以降現在までの日本科学技術史を扱ったのだが、やってみて特に感じたのが私の経済に関する知識の乏しさであった。大学時代には一般教養で経済学を履修したはずだが、ほとんど何も残っていない。今回の授業では私の持っている常識をベースに講義せざるを得なかった。
廣重のテキストは役に立ったかというと、下巻の副題に「経済成長と科学」とあるにも関わらず、ほとんど役に立たなかったと言って良い。廣重が言っているのは、経済成長のために科学技術にたくさん投資されたということだけだ。国家・財界・科学界の三位一体ができあがったなどと言っているが、その実態は具体的に何も示されていない。
経済と科学技術の関係をきちんと明らかにするには、経済のことが分かっていなければならないのは当然なのだが、その辺は科学史家の苦手とするところで、だからといって経済史家がちゃんとやっているかというと、どうもそうでもなさそうだ。
ぼちぼち勉強していくしかない。今読んでいるのは、安達誠司『デフレは終わるのか』(東洋経済新報社、2005年)。昭和初期のデフレと平成のデフレを比較している。ちなみに、科学技術の話は一切出てこない。