15回確保問題

 今年度から本学千住キャンパスでも1学期の授業回数を15回確保するため,授業期間中は祝日も授業をすることになった。他大学でも同様の措置が進んでいるようだ。

 その背景には,日本の大学生があまり勉強しておらず,それが日本の国際競争力に影響しているというような考え,風潮があるように思う。

 ここ数年,この問題が多くの大学で困難を引き起こしているようだが,15回確保するために何か新しい規則などができたわけではない。その根拠は大学設置基準にあり,単位制度に関わるその基準の基本的なところは何十年も変わっていないものだ。私が大学生の時も,その規則は生きていたはずであるが,実態がそれに合っていなくても,だれも問題にしなかっただけだ。いや,今だって,大学設置基準に定められた1時間が実際には45分(90分1コマの授業は2時間分とカウント)でも認められている。つまり,規則と実態のずれをどこまで認めるかはかなり恣意的と言わざるをえない。

 さて,規則上は15回授業をしなければならないのを,実際には12回か13回でも許されてきた慣例が最近は認められないものとなってきた。その根拠を知りたくてネット検索したところ,中央教育審議会大学分科会大学教育部会の議事録と配布資料に参考になるものがあったので,以下に引用する。

中央教育審議会 大学分科会 大学教育部会(第6回)2011.10.28
 資料2 国際的な動向を踏まえた大学教育の展開について(pdf)

単位制度関連の検討事項(大学設置基準の規定とその解釈)

(単位)
第21条 各授業科目の単位数は,大学において定めるものとする。
2 前項の単位数を定めるに当たっては,一単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし,授業の方法に応じ,当該授業による教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,次の基準により単位数を計算するものとする。
一 講義及び演習について 講義及び演習については,15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験,実習及び実技については,30時間から45時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし,芸術等の分野における個人指導による実技の授業については,大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。
三 一の授業科目について,講義,演習,実験,実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については,その組み合わせに応じ,前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて 単位とする。
3 前項の規定にかかわらず,卒業論文,卒業研究,卒業制作等の授業科目については,これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には,これらに必要な学修等を考慮して,単位数を定めることができる。
(一年間の授業期間)
第22条 一年間の授業を行う期間は,定期試験等の期間を含め,35週にわたることを原則とする。
(各授業科目の授業期間)
第23条 各授業科目の授業は,10週又は15週にわたる期間を単位として行うものとする。ただし,教育上特別の必要があると認められる場合は,これらの期間より短い特定の期間において授業を行うことができる。

<解釈>
 1単位は,45時間の学修をもって構成される。45時間のうち,授業を行う時間については,例えば講義であれば,15時間以上が確保されていれば足り,その講義を2学期制であれば15週の間に,3学期制であれば10週の間に行うこととなる。
 授業を行う期間については, 必ずしも講義を15週にわたって週1回行うことを要するものではなく,当該期間が授業期間と設定され,これに加え確保される年間5週(35週から30週を引いた数)の中で,定期試験や補講(授業期間内に15時間が確保できなかった場合,もしくは45時間を超えて授業を行う場合を含む)を行うものとする,という考え方である。

 上記が,文科省の公式の解釈となっているようで,そこから授業15回で,試験をする場合はそれ以外に行う,つまり1学期に16週か17週が必要ということになるようだ。また,主な認証評価機関がこの件についてどのように評価を行っているかの情報もまとめられている。本学の評価を行っている大学基準協会は以下のようである。

(参考)認証評価における授業期間の確認について
大学基準協会
考え方:
 単位制の趣旨に基づき,1単位45時間の学習時間を確保する観点から,授業期間・授業回数を確認する。
 具体的には,学年暦により,10週又は15週にわたり授業期間が設定されていること,また,シラバスにより10回又は15回の授業が行われていることを確認している。
事例:
 授業回数ではなく,講義に充てる時間が少ない場合に,評価報告書で改善を指摘した事例がある。
基準:
 基準4 教育内容・方法・成果について
 3)教育方法
 【点検・評価項目】
 ・教育方法および学習指導は適切か
 ・成績評価と単位認定は適切に行われているか
 【評価の視点】
 ・教育目標の達成に向けた授業形態(講義・演習・実験等)の採用
 ・単位制度の趣旨に基づく単位認定の適切性

 要するに,学年歴で1学期の授業期間が15週にわたっており,しかもシラバスに15回分の授業内容が書かれていればよい,ということだ。なお,先の文科省の解釈によれば,15回の授業内容に試験は含めてはいけないようだ。

 長くなるが,この回の大学教育部会の議事録を引用する。

【佐々木部会長】 まず現行の解釈をきちんとお話しいただけますか。15週ということもそうですが、1コマ90分を2時間と見なしているという実態などいろいろあって、解釈が多様だと思いますので,現行の文部科学省の解釈を説明してください。

【石橋大学振興課課長補佐】 まず,1単位は45時間の学修をもって構成されるということが大原則です。この中で,講義というものだけ,少し例にとってご説明させていただきますと,そのうちの講義を行っていただく時間は15時間から30時間までの範囲で大学でお定めいただいているということで,多くは15時間やっておられるのではないかと思います。
 この15時間という時間の割り振りを1つの各授業科目で考えると,それは10週,もしくは15週という期間の中で学生が大学に来て授業を受けておられるということです。その中で15時間という講義時間を確保していただければいいという考え方です。
 定期試験のところが若干問題になりがちなのですが,ここは10週または15週の授業期間ということで,10週は3学期制,15週なら2学期制なので,そこは30週というものが授業期間として考えられるということになります。これのほかに5週間ということがあって,ここでは定期試験をしていただいたり,15時間以上にわたって学修を提供されるという大学であれば,そこで時間をとっていただくことは可能ですという解釈です。

【濱名委員】 ということは,授業時間に対する規定があるのであって,試験の回数をどうするかということは,各大学が工夫をするべきことであって,試験期間を定めなければいけないということでは必ずしもないと考えていいのですか。例えば,レポートだけで評価をする,あるいは,最終的に総括評価は行うべきだと思うのですが,語学の先生などには,平常試験をたくさんやっていますから最終試験はやらなくていいと言いたがる教員いると思うので,もしそういうような評価を大学として認めるという形であるならば,16週を確保するということが金科玉条の原理ではないと考えてよろしいんでしょうか。

【佐々木部会長】 いわゆる定期試験は,この基準上,義務づけられているのですか。定期試験期間を含む,と出てくるのですが。

【藤原大学振興課長】 これは,大学設置基準第22条に基づきますと,先ほど申し上げたように,授業の期間は30週分しかないわけでして,定期試験等の期間を含め35週にわたるということからすれば,通常は30週の外に何らかの期間があるということになるということが通常の解釈なのではないかと思います。

【濱名委員】 論点を明確にしておく必要があるので,一時期,認証評価で出ていたのが,1週とらなければいけない。結果として、16週になって学年暦が非常に圧迫されているということです。現状とすると,きちんと調査してはないのですが,おそらく筆記試験科目の割合は減っていると思います。なぜかというと,レポートにすれば16週目は,採点をすればいいという形になるので,そういう点から考えれば,プラス1週ということが認証評価団体ではそういう解釈が広がってしまったと思います。これは学士課程答申以降,そういう解釈が優勢になったと思うのですが,我々が気を付けなければいけないことは,もし15時間の授業だけでいいとするならば,日本の大学はレポート課題など平常評価重視になっていってもいいのかと思います。そこまでを含めてシステムとして解釈を考えておかないといけない。プラス1週の影響は正直なところ大きい,入学式は4月1日,2日が大流行で,4月の1週目から授業を始めて,定期試験が終わるのは8月の1週という,そういう状態になっています。ただし,一部国立大学は,まだ15週も確保されてない大学もあると認識しておりますが,だから,そういう点から考えると,現状として大学間で非常に開きがあると思うのですが,15週を確保してない国立大学はないのでしょうか。国立大学は,すべて15週の授業を確保して,その外側に定期試験が設定されているのでしょうか。

【佐々木部会長】 多くの大学は,この「学士課程答申」の20ページの「15時間の確保が必要とされる。これには定期試験の期間を含めてはならない」という,この2行を非常にリジットに読んで,15プラス1,すなわち16週必要だという理解なのです。ここで,荻上委員に登場していただいたほうがいいかもしれません。

【荻上委員】 まず最初に申し上げたいことは,今,佐々木部会長が引用された学士力答申の20ページ,「最低でも15時間の確保が必要とされる。これには定期試験の期間を含めてはならない」と書かれていますが,これは,ある意味では正確な記述ではないと思います。つまり,15時間と言っているのに対して,そこに定期試験の期間を含めるということは,時間と期間が混在しているような感じがしますので,ここは少しわかりにくいと思います。

【佐々木部会長】 ここで言う15時間は,15コマですか。

【荻上委員】 いいえ,大学設置基準で要請されているのは「15時間以上の授業」と「10週又は15週」ということであって,「10回あるいは15回」ということは法令上は定められていません。まず,この点は非常に大きな誤解があると思います。
 それで認証評価の話が出ましたが,私も認証評価をやってまいりましたが,私どもが各大学に関して確認したことは,その大学のアカデミック・カレンダー,学年暦を見て,普通大体週1コマで15週ですが,その15週きちんと枠がとられているかどうかと,そういうことはきちんと確認をいたしましたが,15回実際やっているかどうかということを確認するのは,事実上不可能です。シラバスに15回分書いてあるから,おやりになっているだろうということはあるにしても,きちんとした確認は事実上不可能です。
 それで,申し上げたいのは,先ほど濱名委員のお話にもありましたが,15プラス1ということは,これは大学が試験期間をとっている場合には,当然15週の外でなければいけませんから,それは15プラス1なり,15プラス2でなければいけませんが,もし,いわゆる定期試験は行わずに,そのほかの方法で成績評価をするということを,明確にその大学が決めているのであれば,実はそういう大学はほとんどないと思いますが,もし,そういう大学があれば,それは15週で設置基準違反にはならないと思います。ただ,どこの大学に行っても,アカデミック・カレンダーを拝見すると,必ず試験週間と書いてあります。試験週間と書いてあるから,それはやはり枠の外で数えなければいけないだろうなと我々は解釈をして,そうすると1週足りませんねということは,申し上げてきました。ほとんどの大学が,カレンダーを見ると試験週間と書いてあります。これが現実だと思います。

【金子委員】 これは幾つか問題があって,荻上委員がおっしゃった15時間と,それから15コマというか15回は同じかという問題が一つあるわけです。これはアメリカでも,1時間は,実は休憩時間10分とっていますので50分で認めている。それが今,我が国では,さらにいろいろなカリキュラム上そろえるという都合で45分にしているところが非常に多いです。私は,これは認める範囲ではないかと思うので,あえて,それを問題にしなくてもいいのではないかと私自身は思います。
 もう一つは,20ページでしたか,構築に向けて,これは「定期試験の期間を含めてはならない」と書いてあるのは間違いであるは,私はそうではなくて,授業時間の期間中に15時間確保しろと言っているので,それにプラス1週間は,要するに試験のためにとっている特別な期間なので,それが例えば15時間の中で試験をやるということを妨げるものではないと思うのです。試験は,その試験週間にしかやってはいけないということはないと思います。もともと,なぜこれが出てきているのかといえば,アメリカの規定がもとになっているのですが,アメリカの場合には,普通の授業と違う時間に試験を設定することがかなりあるのです。例えば,45分授業の場合には,要するにカリキュラム上の授業時間で試験ができない場合も結構あるわけです。ですから,試験期間は別だということなのです。それから,日本の場合,特に大きいのは,法学部なんかは,もともと試験は授業と独立しているという考え方ですから,その学期で授業をとらなくても試験を受けられるわけです。そういう意味では,試験の期間1週間は特別にとるということになります。
 それから,日本の場合には,実は幾つかの大学では,授業に登録した学生が全部来ると教室がとれないけれども,試験週間だけはないとまずいということで,試験週間は別に指定しているのです。これは有名大学でも現実的にかなりあったわけです。それなので,試験週間は別にするということをわざわざつくっているのだと思うのですが,私はその試験週間に試験をしなければいけないということでは必ずしもないと思います。

【荻上委員】 それはそのとおりだと思いますが,週1コマで15週枠とってあって,最後の1週間を定期試験というふうにアカデミック・カレンダーに書かれていると,これはルール(「15時間以上の授業」)違反だということは非常にはっきりしていると思います。そういう大学が,まだ少なからず残っていると思います。ただ,ここ二,三年の間に随分減ったと思います。

【佐々木部会長】 そうすると,15週を授業時間としてきちんとカレンダーに組んであれば,試験をどこでやろうと,それは認証評価機関としては問わないのですか。

【荻上委員】 あまりはっきり言ってはまずいのかもしれませんが,15週とってあって,試験週間とも何とも書いてなければ,これは評価する側としては,大学設置基準違反とは言えないと思います。ただ,15週目を定期試験とはっきり書いてあると,これはやはりまずいだろうということです

【川嶋委員】 先ほどの高祖委員の話とも通ずるのですが,要するに日本の大学教育の前提が,そもそも15週と15時間,1対15ということが,くっついていることが誤解につながっていると思います。週に1回授業をやるという,そういうそもそもの前提があるから,そういう混乱が起きるのであって,アメリカのように週に2回とか,50分の授業を2回とか,90分の授業を1回とか,いろんな組み合わせで授業が成り立っているのだと思います。これは日本の場合は,高校までは同じ科目が週何回もあるのに,いきなり大学へ来た途端,週1回だけ授業をやるという,そういう思い込みというか前提があって,そこが大もとで,この意識を変えていかないと,今の回数と単位に必要な時間という問題はなかなかとけない。先ほどの前半のほうの資料,そこにつながってくることだろうと思います。

【林委員】 私が以前いた大学で,この議論がなされたとき,不合格になった学生で,授業の再履修は問わないが,要試の学生にチャンスをやるためにどうするかという問題が一つありました。例えば2学年と3学年に対して,月曜日から金曜日まで授業がびっしり詰まっているなかで,試験の準備をし,受験を可能にするためには,15プラス1週ではなくて,2週の準備をするというやり方です。それから,50分授業については,1時間1コマ50分に対して,続ける場合には,イントロダクション(導入)と結論(まとめ)の分と合わせて10分省略できるという解釈をしたことをつけ加えておきます。

【佐々木部会長】 この議論は,もう少し整理をしていただいた上で,また続けたいと思います。私は,1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする「内容」をもって構成することを標準といっている,この「内容」という点が大事なのではないかと思うのです。45という数字だけが一人歩きして,「必要とする内容」が飛んでいるのではないでしょうか。そんな点も含めて,少し論点を整理していただきたいと思います。

【小松私学部長】 一応補足的に申し上げたいと思うのですが,今のご議論は,大学は,かなり慣行というものを中心に制度ができております。必ずしも成文法だけでできているのではなくて,しかも単純に慣行だから漫然とやっているというわけでもなくて,一種慣行法的なものを尊重して,自主的にでき上がっているという面があります。
 そこで,慣行がかなり法令と一緒に解釈されているところがあって,その点は,この辺までは慣行かと,この辺は法令の解釈なのかということは確かに整理したほうがいいということは一つあると思います。
 その中で,一ついろいろ法令とかを運用する上で留意点と思いますのは,15時間,15週,これは例えば1週間に一遍ぐらいやるということは,もちろんインテンシブにやってもいいし,それからセメスターごとに完結して週2回やってもいいし,集中講義をかませる場合もあるし,そういう意味では,まさに45時間の内容を確保すればいいということが一つあります。
 しかし,ノーマルなものとしては,今日,たまたま大学基準協会の「大学における一般教育」という机上資料が配られております。これは大学教育そのものの考え方,専門教育を含めたものが書いてありますが,総合的人間形成は,日本の教育観,あるいは教育制度には非常に深くビルトインされております。学習指導要領でも教科と道徳と特活と,別に知識と技術だけではなくて,トータルでカリキュラムを組むようになっております。それには,年齢とか成長というものが関係をするので,学年制というものを非常に重視されております。
 学校教育法では,大学は必ずしも学年制ではありません。修業年は4年間ですが,1年ずつ到達主義で積み上げていくわけではありませんが,大学は基本的に学年制を中心に回っていると思います。全くそういうものを取り払ったものはないでしょう。そういう意味では,積み上げていくという成長過程,人間形成というものは,アメリカ型の民主主義社会の市民を育てる高等教育ということと,伝統的な日本型の教育制度を組み合わされてできております。
 そうしますと,慣行に属するかもしれませんが,カリキュラムの組み方や進行のさせ方については,一つの科目を集中的にやって,これを完了したら,その次に行って,合理的に全部がこなせればいいではないかという考え方をとらず,少しずつ少しずついろんな科目を勉強して,響き合わせながら,トータルとして1年四季をたってみると,一つの成長があるような形に組まれていることが多いので,そういたしますと,必ずしも,実は知識,技術の修得に,ものによっては集中的にやったほうがいいものもあり,現にそれをやっても一向に変にはならないと思いますが,ノーマルな形としては,一つの授業科目は週に一遍ぐらいで組んで,全体としてやるのが非常に合理的でもあり,リズムに合っているという考え方で定着をしているということがあるわけです。
 そういう意味で申しますと,これは一般教育の区分をどうするかということを考えた平成3年のときの議論でも散々出てきたのですが,15回なので,例えば1日3コマで,二,三週間でやるかというと,今度は全体のカリキュラム体系など,そういうことを考えたときに想定はされていないだろうと思いますので,週1が法令だとは決まってないし,やぶることは十分にあるが,一つの標準系として,そういうことが想定されているだろうということは考えられます。
 それから,年間35週ということがございます。これは実は幼・小・中・高・大を全部通して年間35週です。大学と幼稚園は全然違うだろうということだが,制度としての日本の学校教育という考え方として,一定の長期の休みを挟んだりしながら,そういった時間的な熟成を図っていく点では,共通の制度ということになっております。そういう中で,一定の時間をかけて全体のカリキュラムをこなしていくことになりますと,繰り返すようですが,法令的にはさまざまな展開があり得るのですが,今行われていることが慣習として定着し,慣習法の強い大学の世界では,かなりの程度,それが規範になっているという現状だと思います。それは,それなりには尊重されていかないと,全部好きにしていいというと,またかなりおかしくなるので,ただ,その整理が必要だということが本日のご議論かと思います。
 なお,もう1点だけ申し上げますと,定期試験の期間を含めるか,含めないかということは,まさに大学でカリキュラムを組まれたときに,定期試験の期間を別途設ければ,それは15週に入らないということだと思うのです。しかも,各大学ではそれを分けておられることが多いです。これには慣行もありますが,先ほどの私が1年間ということで申し上げました大学設置基準で言いますと,第22条の「1年間の授業を行う期間は,定期試験等の期間を含め,35週にわたることを原則とする」と書いてあります。こちらは15週とかではなくて35週,先ほど申しました年間の全体の,そこでわたれと言ってますので,わたらなくてもできるかもしれませんが,それをわざわざ時間をかけてやれと言っていることは,先ほどの私が申し上げた幼稚園から大学を含めた全部の教育のカリキュラムの考え方ということですが,これを見ますと,一応定期試験の期間というものは分けろとは書いていないが,したがって中に含まれることはあり得ると思うのですが,一応概念としては分けて書いてあるので,これも各大学で分けるのかと思って,定着する一つの理由だと思います。
 しかし,ここで書かれていることのほんとうの意味は,15週間で,例えば2回の定期試験でやるので,その分を試験に変えてしまって,授業をどんどん時間数を減らすなど,そういうことによって実質が失われないようにするということが本旨であって,機械的な期間を分けて,そうしなければいけないという意味ではないと思います。このあたりの解釈が,我々も含めまして,若干未整備なところがあるということだと思いますので,幅があるということも含めた整理をするのが一番よいのではないかと。少し運用側から申しますと,本日の議論を聞いていて,そのように思いました。

【佐々木部会長】 ありがとうございました。今の小松部長のお話が大体議論のベースになると思います。そもそも,この議論は学生に45週間に相当する内容の教育をどうやって実施することができるかというところから派生した問題ですので,これを含めて,また後日,議論を進めさせていただきたいと思います。

 上で太字にした荻上紘一専門委員(大学評価・学位授与機構特任教授)の発言からは,15回の授業の中で試験をやっている場合は,認証評価の際,大学設置基準違反という指摘がなされる恐れがあるということだろう。本学は今年度から試験込みで15回を確保したが,さらに進んで試験を除いて15回確保に進むことになるかもしれない。

付記:15回確保問題は,2008年12月のいわゆる学士課程答申(中教審「学士課程教育の構築に向けて」)に,次のように書かれたところから始まったようだということが分かった。

このような状況を踏まえ,単位制度の国際的な通用性の観点から,学習時間の実態を国際的に遜色ない水準にすることを目指して,総合的な取組を進める必要がある。その前提として,1単位当たりの授業時間数が,大学設置基準の規定に沿っている必要がある。具体的には,講義や実習等の授業の方法に応じて15~45時間とされており,講義であれば1単位当たり最低でも15時間の確保が必要とされる。これには定期試験の期間を含めてはならない

【天気】晴れ。暖かくて春らしい。サークルの勧誘をやっていた。